土石流被害、轟音とともに濁流が街を呑み込む


熱海市で、「バキバキ」消えたアパート、バスも流され

土石流被害、轟音とともに濁流が街を呑み込む

土石流で民家が泥に埋まった伊豆山地区=3日午後、静岡県熱海市(大東健太さん提供・時事)

土石流被害、轟音とともに濁流が街を呑み込む

土石流で泥やがれきなどが流れ込んだ伊豆山地区一帯=3日午後、静岡県熱海市(大東健太さん提供・時事)

 静岡県熱海市伊豆山で3日午前に発生した土石流。「バキバキ」「ドドドーッ」。辺りの空気を震わせるすさまじいごう音とともに、茶色い土砂が山肌を削るように激しく流れ落ち、アパートをのみ込み、バスを押し流した。

 「こんなことになるとは想像もしなかった」。現場を目撃した同地区の男性(55)は声を震わせた。知人から連絡を受けて駆け付けると、山の方から土砂が川のように流れ落ちているのを目撃。直撃を受けたアパートは丸ごとなくなっていたという。

 慌てて撮影したという動画には、大量の茶色い土砂が複数の家屋や乗用車、電柱などをのみ込んだ様子が映っていた。辛うじて残った家も、1階が泥に埋まり、見えなくなっている。

 男性は「崩れた場所は裏山の傾斜が強い所。近くの知人は、朝方に『ゴオーッ』という変な音がしたと話していた」と振り返り、「高齢者が多く住む地域なので、逃げ遅れた人がたくさんいるんじゃないか」と不安そうに話した。

 土石流は、発生地点から500メートル以上離れた海沿いの国道135号まで届いた。午前11時40分ごろ、車で通ったという同県沼津市のパート女性(41)は「危険を感じてUターンしたら、さっき通った道が土砂に覆われていた」と説明。「あぜんとした。少しでも遅かったら巻き込まれていたかもしれない」と驚いた様子で話した。

 「ゴゴゴというすごい音とともに土砂崩れが起きた。知り合いの家も流された」と話すのは、135号沿いのガラス工房代表大東健太さん(35)。土砂や木が逢初川に沿って流れ出し、一部は海まで達したという。

 工房にいた10人は全員無事だったが、駐車場にあった従業員と客の車が流された。スタッフの川田瑞樹さん(29)は「バキバキ」というごう音を耳にした。近くを走っていた回送中のバスが土砂に巻き込まれて流されて行くのを目撃。運転手は救出されたが、「土砂は店の前まで流れて来た。ショベルカーで家を壊す時のような音がした」と動揺した様子で語った。

 現場近くのMOA美術館には、午前11時ごろから警察官に連れられた近隣住民ら約10人が避難した。憔悴(しょうすい)し切った様子といい、担当者は「こんな大きな災害は初めて。水やおにぎりを出すなどできることをしている」と話した。