熊本豪雨1年、復興の願いを御朱印に込めて


氾濫で浸水した人吉市の青井阿蘇神社「地域を元気に」

熊本豪雨1年、復興の願いを御朱印に込めて

復興の願いを込めた御朱印への思いを話し合う宮司の福川義文さん(左)と、御朱印を手掛けた1級印章彫刻技能士の荒木桃園さん=6月9日、熊本県人吉市(時事)


 
 災害関連死を含め67人が死亡、2人が行方不明となった熊本豪雨から4日で1年となる。球磨川の氾濫で浸水した熊本県人吉市の青井阿蘇神社では、復興の願いを込めた新しい御朱印が作られた。宮司の福川義文さん(57)は「神社が元気になれば、地域の人たちも元気を出そうという気持ちになるのでは」と話す。

 同神社では国宝に指定された拝殿が床下浸水し楼門が冠水。社務所も浸水し、奉納された刀剣77本が水没した。福川さんは「泳ぐようにして神社の様子を見に行った」と1年前を振り返る。

 新しい御朱印は1級印章彫刻技能士の荒木桃園さん(40)が同神社に奉納した。2016年の熊本地震で甚大な被害を受けた益城町在住の荒木さんは「復興に向かって一歩踏み出す気持ちになるまでが遠かった」と当時の心境を表現。自宅を失った被災経験から「人吉のために何かしたい」と御朱印を製作した。

 荒木さんが「命を削って掘った」と話す御朱印は、同神社の「おくんち祭」で使う「チリン旗」を題材にした。荒木さんから奉納を受けた同神社は、「復興へ導く」という願いを込め、「導」の文字が書かれた金色の御朱印紙を作った。

 水没してさびた刀剣を修復するためのクラウドファンディングには、目標額500万円に対して3500万円以上の支援が集まった。来年6月ごろ、境内に建設する宝物殿に展示する予定だ。「地域の人は神社を心のよりどころと言ってくれる。神社の復興により、地域の人たちが復興への一歩を踏み出すきっかけになれば」と語った。