広がる「稼ぎながら旅」を楽しむ、日本一周も


コロナ禍で宅配需要に追い風、自由な働き方が利点に

広がる「稼ぎながら旅」を楽しむ、日本一周も

料理の宅配サービスの仕事をしながら旅を続ける札幌市在住の男性(左)=18日、秋田市(時事)

 運搬用のリュックとスマートフォン、自転車があれば働ける飲食宅配代行サービス。勤務時間や場所を自由に選べる利点を生かし、配達員として旅費を稼ぎながら旅を楽しむ人々がいる。コロナ禍の巣ごもり需要で宅配市場が急拡大し、収入を得やすくなったことも追い風となっている。

 札幌市の男性(38)は15日、原動機付き自転車で配達員をしながら全国を巡る旅に出た。会社員時代も副業で配達員をしており、「旅費を稼ぎながら知らない街に行ける。コロナ禍の今しかない」と思い付き退社。業者によって配達エリアがない都道府県もあるため、大手の「ウーバーイーツ」や「ウォルト」など4社を掛け持ちし、リュックやユニホームを着分けて配達をこなす。

 出発前にPCR検査で陰性を確認。ネットカフェなどに寝泊まりし、午前11時から午後10時まで配達する。1日の配達成果や訪れた街、名物の食べ物の写真などはSNSに投稿。「配達先が『ありがとう』と喜んでくれたり、旅先で出会った配達仲間で食事に行ったりもする」と魅力を語る。

 昨夏、日本一周を始めた佐藤怜さん(29)もそうした一人。以前、旅行中に足りなくなった交通費を配達収入で賄った経験があり、配達しながら全国を回ることを考えたという。貯金10万円を手に沖縄県から原付きで出発し、途中で自転車に切り替え九州や中国、関西など17府県を走破した。

 コロナ対策に余念はなく、配達中を含め、自転車をこぐ時は常時マスクを着用。人混みを避け、節約も兼ねて郊外の無料キャンプ場やゲストハウスに宿泊する。基本的に大都市などで半月働いて資金をため、残りの半月を旅と移動に充てるスタイルだが、気の赴くまま滞在日数や目的地を決め、観光や食事、人々との交流を楽しんでいる。

 「お金がない時すぐに働くことができ、旅との相性は抜群」と佐藤さん。日本一周後の目標は世界一周といい、「配達で稼ぎながら世界を旅できたら最高です」と声を弾ませた。