宮城で聖火リレー、被災者や患者に希望の光を


ALSの医師・太田守武さんが電動車いすに乗ってつなぐ

宮城で聖火リレー、被災者や患者に希望の光を

自力で電動車いすを操作し聖火リレーをする医師の太田守武さん=20日、宮城県多賀城市(代表撮影・時事)

 「被災者や病と闘う人に勇気と希望を持ってほしい」。全身の筋肉が動かなくなる「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」と闘病しながら、難病患者に対する相談活動を続ける医師太田守武さん(50)が20日、宮城県多賀城市で電動車いすに乗って聖火をつないだ。

 訪問診療医として働いていた2011年に東日本大震災が起き、ボランティアとして宮城県女川町や南三陸町で活動。その年にALSを発症した。少しずつ動かなくなる体でボランティアを続けたが、4年で歩けなくなり支援から遠ざかった。

 手足がまひし、人工呼吸器を装着した後は「自殺も考えた」が、周囲の支えを受け自らの経験を生かしたいと思うようになった。NPO法人を立ち上げ、千葉県八千代市で全国の難病患者らの医療相談を受けている。

 被災地の復興を願う気持ちも変わらない。3年前からは看護学生と共に、南三陸町で被災者の心のケアに取り組む。「復興を待つ被災者の姿は、私がALSを治療できる日を待ち望んでいるのと共鳴しているのかもしれない」と語る。

 太田さんは、新型コロナウイルスの影響で聖火リレーが1年延期となった時間を使い、額と口に着けたセンサーで電動車いすを自力で操作する準備を進めてきた。本番では途中何度か止まり、妻友香利さん(37)が方向を直す場面もあったが、約200メートルの距離を10分以上かけて力走。走り終え、「皆さんへの感謝の気持ちで頑張れた。無料医療相談と被災地支援はこれからもずっと続けていく」と決意を語った。