9都府県で緊急事態解除が決定、酒類提供再開へ 


飲食店経営者、「生活守れる」感染増に不安の声も

9都府県で緊急事態解除が決定、酒類提供再開へ

五輪マークの旗がはためく新橋の飲食店街=17日午後、東京都港区(時事)

 東京五輪の開幕が迫る中、東京や大阪など9都道府県で緊急事態宣言の解除が決まった。一部規制を緩和したまん延防止等重点措置への移行を控え、飲食店の経営者らは17日、酒類提供再開への準備を本格化させた。ただ、「五輪をにらんだ対応」「リバウンドが心配」と懸念する声も多く、繁華街などに期待と不安が交錯した。

 宣言解除後、客の人数などに制限を設けつつ、飲食店に酒類提供の容認を検討する東京都。足立区の海鮮居酒屋「つっち~」の店長土田裕介さん(39)は、4月25日から休業を続ける店の再開のめどが立ち、「スタッフの生活を守ることができうれしい」と笑顔を見せた。ただ、この時期の宣言解除について、「五輪をにらんだ対応だ」と政府への不信感も。「(解除後)確実に人の流れが増える」と感染者増への不安を漏らした。

 宣言中はノンアルコール飲料のみで営業してきた練馬区のバー「咲場923」の経営者国沢禎樹さん(62)は「感染対策をしっかりしても酒が悪者にされた。今後は安全性をもっとアピールする」と意気込んだ。

 重点措置下の飲食店の酒類提供について、北海道と協議を続ける札幌市。繁華街ススキノにあるクラフトビール店の店長代理の男性(21)は「ビールの仕入れなどには時間がかかる。早く詳細を示してほしい」といらだちを隠さない。周辺には、自治体の要請に従わず、酒類提供や深夜営業を再開した店も多い。「宣言解除後も時短営業要請が続く限り、お客さんが戻って来ないのでは」と不安げに語った。

 一方、医療体制の逼迫(ひっぱく)を理由に、沖縄県は唯一、宣言延長が決まった。離島の久米島町に住むタクシー運転手の豊里栄進さん(70)は「感染すると本島の病院にヘリで運ばれることになりそうだが、時間がかかるので重症化する可能性がある。われわれの世代は不安だ」と語り、宣言継続による感染者減に期待を寄せた。

 那覇市の百貨店で働く20代女性は「観光客の姿はほとんど見かけない」と明かした上で、「宣言前からの客の増減は感じない。解除して何かが変わるわけではないと思う」と低迷する観光需要に諦め顔だった。