「魚離れ」回復の兆し、巣ごもり消費も追い風


18年ぶりに購入量増、教育現場の取り組みで若者が関心

「魚離れ」回復の兆し、巣ごもり消費も追い風

築地場外市場を訪れ、さまざまな水産物を見て調理法などを学ぶ東京海洋大学の学生=5月31日、東京都中央区(時事)

「魚離れ」回復の兆し、巣ごもり消費も追い風

「ご当地!絶品うまいもん甲子園」第10回大会への参加をPRする「全国食の甲子園協会」の藤田志穂会長=5月20日、東京都渋谷区(時事)

 サンマをはじめ魚の水揚げが低調な一方で、水産業界の大きな課題となっているのが魚消費の低迷。若者の「魚離れ」が指摘されてきたが、近年、教育現場での取り組みや新型コロナウイルスの影響による巣ごもり消費もあって「魚食回復」への兆しが見え始めている。

 水産庁によると、国民1人当たりの魚介類消費量は、2019年度が23・8キロで、ピークだった01年度(40・2キロ)に比べ4割減少。10年ほど前に肉の消費量を下回り、その差は開く一方だ。要因には調理の手間などが挙げられる。

 若者への魚食普及が求められる中、東京海洋大学(東京都港区)は17年度に「魚食文化論」の講座を開講。和食の代表格となっている魚食だが、その歴史や地域ごとの食材、調理法などを学ぶ講座は、全国でも例がないという。

 講座は魚食に関する知識と同時に、調理体験も盛り込む。大学内では「魚を下ろせる学生は3割くらいしかいないが、興味を持って調理を楽しんでいる」(婁小波教授)と人気の講座となっている。

 全国の高校生らが地元の食材を生かした料理を考案し、出来栄えなどを競い合う「ご当地!絶品うまいもん甲子園」が今年10回目の大会を迎える。年1回開催され、3人1組で同一校から複数グループの参加も可能。高校側の後押しもあって、規模は年々拡大。現在参加校を募集中(7月11日締め切り)で、11月下旬に東京で決勝大会が行われる。

 これまで入賞作品には魚介類を使った料理が多く、コンビニなどで商品化された例も。大会を主催する一般社団法人「全国食の甲子園協会」の藤田志穂会長は「去年は新型コロナの影響で消費が鈍った愛媛県のタイなど、地元の名産を使った料理での応募が目立った。今年もできるだけ多くの高校生に参加してもらいたい」と話す。

 中国をはじめ、世界で水産物消費が高まっている半面、日本の魚食は細る一方。ただ、新型コロナがまん延した20年は巣ごもり需要の増大から、若干風向きが変わってきた。

 総務省の家計調査報告によると、20年の1世帯当たり(2人以上)の「生鮮魚介」購入量は、23・9キロと18年ぶりに前年を上回った。マグロなどのほか、アジやサバ、カレイといった調理に手間がかかる魚種も多く、先行きに期待が高まっている。