パラ開幕まで100日、 「やれればいいが厳しさも」
複雑な胸の内、選手村常勤医の岐阜大医学部の青木隆明氏
開幕まで100日となる東京パラリンピック。パラスポーツの支援を続け、大会では選手村に開設される総合診療所で常勤医を務める岐阜大医学部整形外科の青木隆明特任准教授(58)が取材に応じた。新型コロナウイルス禍で機運が高まらない状況に「選手を思えばやらせてあげたいが、難しさも感じている」と複雑な胸の内を語った。
青木氏は1992年のバルセロナ大会で水泳選手の担当医として同行して以来、代表のサポートや国内の競技会などの運営に携わり、選手の相談にも乗ってきた。東京大会では4人いる常勤医の1人として、医療相談や診察に従事する予定だ。
ただ、大会組織委員会からは、診療所の運営方法や体制について具体的な説明はなく、準備状況が全く見通せないという。「打ち合わせも延期前で止まったまま。選手が発熱した際の手順など新たに準備すべきことも多い」と青木氏。新型コロナへの対応で医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、「長期の休みを取り大会に参加するとは言いづらいだろう。今仕事をしていない看護師らはワクチン接種もどうなるか」と人員確保も懸念する。
健常者以上に感染リスクを抱えながら、数少ない海外の試合に出て障がいのクラス認定を取得するなど、懸命に備える選手の姿を見てきた。進行性の症状があり、次の大会に出られるか分からない選手もいるという。
「必死な選手を見ると、規模を縮小しても、できれば大会はあってほしい」と話す一方、大学病院もコロナ患者を受け入れており、開催の難しさも人一倍感じている。「6月にある研修で、組織委が十分な体制を示すことを望んでいる。実施するなら全面的に協力する」と語った。