早期解決求める元島民
外交交渉後押しへ国民世論喚起を
北海道総務部北方領土対策本部北方領土対策局長 平塚利晃氏に聞く
安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領の首脳会談がここ数年、頻繁に開催されることもあって、北方領土問題が解決の方向に動くのではないかという期待が元島民の間に広がっている。ロシア側の態度は依然として頑なだが、今年一年の北海道の取り組みを平塚利晃・総務部北方領土対策本部北方領土対策局長に聞いた。
(札幌支局・湯朝 肇)
北海道としては、北方領土返還要求運動に関しては、どう向き合っていこうししていますか。
元島民にとっては北方四島返還が最終目標であり、四島を返してほしいと思うのは当然です。ただ、戦後70年以上にわたる返還運動の中で日本と旧ソ連、あるいはロシアとの首脳同士による会談が何度かもたれましたが、一歩も前に進まない状況が続きました。そうした中で昨年11月の日露首脳会談において1956年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることで合意し、12月と今年1月には、その合意を踏まえた交渉が進められています。一日も早い北方領土の返還に向けて目に見える形で交渉が進展することを強く期待しています。
ロシアのラブロフ外相は先月の日露外相会談などで「日本は、北方領土をすべてロシアの主権だと認めよ」というなど、頑なな態度を示していますが。
ロシアはこれまでも一貫して頑なな態度を見せてきました。これまで動かなかった北方領土交渉を何とかして前に進めるために、双方が受け入れ可能な解決策を目指して今後交渉が進められていくものと思います。そうした外交交渉を後押しするためには、国民世論の結集が何よりも重要であることから、北海道としては北方領土返還要求運動関係団体と連携しながら、一層の世論喚起を図るためあらゆる機会を捉えて最大限の啓発活動を行っていきたいと考えています。
平成28年12月の安倍首相とプーチン大統領による首脳会談において、平和条約締結交渉に向けて「日露の立場を害さない特別制度」の下で、北方四島における共同経済活動が提案され、以来、協議が進められていると思いますが。
道ではこれまで四島との交流の窓口を担ってきた隣接地域や元島民の皆様の意見を伺い、共同経済活動の早期実現などを国に要請してきました。具体的には、昨年5月には日露首脳会談に向けて、高橋はるみ知事が安倍首相に対して、プロジェクトの着実な実現、またプロジェクトを進める際には隣接地域を中心とした道内企業の参画を要請し、昨年11月の首脳会談に向けては、プロジェクトを進める際の事業者同士のトラブルや不当な技術移転の防止、経済以外の分野の協力拡大などについても早い段階で着実に整備していただくように要請したところです。
さらに、昨年は実際に北方四島を訪問し、道内企業も参加して具体的にプロジェクトをどう進めるか、といったことについても四島の関係者と意見交換を行いました。併せて昨年11月(網走市、帯広市)と今年1月(函館市)には元島民や経済関係者などを対象とした共同経済活動などの現状を周知するセミナーを開催しております。今後も日露政府間の協議の状況を注視しつつ、隣接地域等と、より一層連携を図りながら国への要望や提案を行うなど必要な役割を果たしていきたいと考えています。
元島民一世の方々は高齢化しています。北方領土問題返還の早期解決は急務です。
北方領土問題が発生してから70年以上が経過し、元島民の方々の高齢化が進む中、若い世代の北方領土問題に対する関心と理解を深めていくことが、大変重要であると認識しています。北海道としては、「北方領土の日」ポスターコンテスト、中学生作文コンテストや中高生合唱コンサートなど若年層を対象とした啓発活動を行ってきました。また、92年より行われているビザ(査証)なし交流においても、中高生など若者を対象にした交流が行われており、若い世代の人にも北方領土の現状を知ってもらう機会になればと思っています。これらの事業は今年も計画されていますが、同時に、道内各地で開催される各種イベントに啓発ブースを出展したり、キャラクターを活用したステージイベントで領土問題をPRするなど返還要求運動の裾野拡大に努めていきます。
領土返還要求運動では人材育成の他に墓参などの事業を展開していますが、どのような点を重点的に進めていく所存でしょうか。
北海道としては今後とも北方墓参、自由訪問、四島交流、そして共同経済活動の四つの取り組みを駆動力として日露双方の信頼関係強化を図りながら、一日も早い領土返還、平和条約締結に向けて啓発活動などを推進していこうと考えています。とりわけ、北方墓参については、元島民の方々がすでに1万人以上お亡くなりになり、存命な方の平均年齢も84歳と高齢になっています。道としては元島民の方々の気持ちに寄り添った取り組みが重要と考え、これまで追加的な出入域地点の設置や航空機墓参の実施などを国に要請してきました。道としては、今後も国と元島民の団体である千島歯舞諸島居住者連盟などの関係団体と連携を密にして北方領土返還に向けた活動を進めてまいります。