人口減少に立ち向かい地方創生果たす
北海道再生
北海道道議会議員 柿木克弘氏に聞く
自然が豊かな北海道。近年は本道を訪れる外国人旅行者も増え国際的な知名度も高まっている。その一方で人口減少の波は北海道も例外ではなく、札幌市を除いて道内各地の市町村にも押し寄せ、過疎化が深刻な問題となっている。地方創生、1億総活躍社会の実現は安倍政権の政策の大きな柱で、今夏の参院選でも公約の一つ。そうした中で、北海道は参院選挙区の定数が一つ増え、2から3議席になった。それに合わせて自民党道連は候補者を2人とし、現職に加えて北海道道議会議員の柿木克弘氏を参院選挙候補予定者に決定。そこで柿木氏に北海道再生の方策などについて聞いた。
(聞き手=湯朝肇・札幌支局長)
政治の力で古里を元気に/可能性の最大化に挑戦
“守り”の姿勢から「攻めの北海道」へ
昨年末に柿木先生は、自民党から北海道参院選挙区第2支部長に任命され、今夏の参院選候補予定者として決定されましたが、参院選に臨むと決意された動機はどの辺にあったのでしょうか。
私は札幌の大学を卒業後、国会議員の秘書を経て平成7年に美唄(びばい)市の市議会議員に初当選しました。30歳の時です。それから11年の道議会議員選挙で初当選し、現在5期目を務めています。私は「責任、信頼、行動」をモットーに政治一筋の道を歩んできました。美唄選出の道議会議員ですが、地方を代表する議員として常に地方の目線で政治に取り組んできたつもりです。現在、人口減少が叫ばれていますが、北海道は以前から過疎化は深刻な問題でした。とりわけ、北海道は美唄をはじめ炭鉱で栄えた町が多く、石炭産業が落ち込むと同時に疲弊していく状況を目の辺りにしてきました。現在、北海道には179の自治体がありますが、地方はどの町も必死で生き残りをかけて取り組んでいるというのが実態です。道議会議員として5期18年間、衰退する地方の姿を見ていく中で、地方の痛みを心底わかっている者が政治にかかわり、今こそ政治の力でふるさとを元気にしなくてはならないと思い、国政への挑戦を決断しました。
今年7月の参院選で北海道選挙区の定数はこれまで2議席から3議席に増えました。自民党はすでに現職の長谷川岳氏が決定しており、もう1議席を確保するということで柿木道議が参院選の候補者予定者になったということですね。
道議会議員となり、20年近く札幌と美唄の二重生活を続けてきました。札幌は190万人の人口を抱え大都会の華やかさがあります。また、本州大企業の支社・支店が集まるなど北海道経済を牽引(けんいん)する重要な役割を担っています。その一方で、地方は前述のとおり人口減少が加速し、札幌は本州から見れば地方都市ですが、道内ではその格差は大きいものがあります。札幌以外の道内市町村はまさに“歯を食いしばって生活している”状況です。現職の長谷川岳先生は、よさこいソーラン祭りを立ち上げるなど札幌を中心に歩んでいますが、私はあくまでも地方にこだわり、「地方を大切にする」という原点を忘れず、北海道が自ら持っている可能性を最大限に発揮できるよう政治家としての仕事をしていきたいと考えています。
北海道の再生に向けて、どのような地方をつくっていきたいと考えていますか。
北海道はこれまで農水産業と建設業で発展してきたといっても過言ではありません。もっとも明治以降、本格的な開拓が始まってから北海道は150年ほどしか経っておらず歴史が浅く、文化もこれから作っていくといった感じです。経済的には以前から北海道は“自立”を求められ、また自らもそれを目指してきました。ただ、この広い大地。日本の面積の約5分の1を占め、人口は全体の20分の1程度。社会資本整備が進んだといっても、北海道は高規格道路の整備は58%程度で十分とはいえません。北海道は広大な地域に都市が散在する広域分散型社会を形成し、人の流れ、物流ともに9割が自動車に依存しています。従って、生活道路含めてライフラインを確保するための社会資本の整備を早急に進めなければなりません。札幌のような便利な生活はできなくとも、地方であっても最低限の文化的な生活水準を享受できる基盤を作ることが不可欠です。
3月26日に新青森-新函館北斗間の北海道新幹線が開業しました。北海道の交通・観光にとっても新しい歴史の一ページになりますね。
北海道に新幹線を通したいというのは道民の長年の夢でした。ある意味で遅すぎるといってもいいほど。ただ、新函館北斗市まで北海道新幹線が来たのですから、歴史的なことは間違いありませんし、それはうれしいことです。今回の開業で道南・北東北地方圏の交流は進んでいくでしょう。ただ、北海道経済を活性化させるとあれば最低でも札幌まで延伸させる必要があります。2030年までに延伸させることが決まっていますが、個人的には一日も早く開業させていきたいと考えています。
北海道は農水産業が基幹産業になっていますが、TPP(環太平洋経済連携協定)など北海道にとっては逆風となるものもあります。その一方で近年、北海道を訪れる外国人旅行者が増加していますね。
TPPに対しては今後、いろいろな対策が必要だと思います。北海道農業は1戸当たりの耕作面積からして本州とは違います。農業の形態が違うのです。そこで何よりも大事なことは、農業の担い手の人たちが夢や希望を持っていけるような産業にしていくこと。単に作るだけでなく、加工や物流でも付加価値をつけた産業を幅広く育成していく必要があります。さいわい本州でも北海道産米はかなり高い評価を受けています。また徐々に北海道産農産物の輸出が増えてきました。水産物や畜産物を含め今後、さらに輸出を拡大させることは可能だと考えています。従って、北海道は“守り”に入るのではなく、「攻めの北海道」という意識を持って取り組んでいきたい。
一方、観光産業も北海道経済にとって大きな柱になることは間違いありません。海外からやって来る観光客は北海道の自然と新鮮な食べ物に大きな魅力を感じていますが、喜ばしいのはリピーターが増えていること。アジアでは今、「北海道」そのものがブランドになるほど人気があるといいます。従って、今後観光客を増やすには、単に飲食や見学だけのツアーではなく、陶芸や祭りなどに参加して体験して喜んでいただく体験型ツアーの企画も充実させる必要があるのではないかと考えています。
また、観光を含めて地方が活性化していくには一つの地方自治体だけで取り組むには限界があります。これからの時代は周辺の自治体が連携し、広域的に取り組む必要があります。もちろん、これまでにもある分野では広域的な取り組みがなされてきましたが、より緊密な広い範囲で連携をもって地域周辺の特色を引き出す。そのためには知恵を出し合い、すぐに行動に移していかなければ周辺地域そのものが生き残ることはできないと考えています。