ロードバイクで鳥海山へ登る
景色堪能し体力づくり
高校3年生 新田 岳登君に聞く
 鳥海山ブルーラインが除雪を終えて開通した4月17日、下から車で登って行くと、自転車を漕(こ)ぐかっこいいウエアの青年とすれ違った。開通した5合目・鉾立(ほこたて)山荘下の駐車場で道路脇の雪の壁を撮影中、彼が現れた。急遽(きゅうきょ)、秋田県立仁賀保(にかほ)高校3年生の新田岳登君(17)にサイクリングの魅力を聞く。
(聞き手=伊藤志郎)
毎日70キロ、心地よい疲れ
トライアスロン、登山にも挑戦
車でも急坂で大変なのに、下から登って来たんですか。疲れないですか。筋肉痛には。

にった・がくと ロードバイクを中学3年で始める。高校2年の時、秋田トライアスロン芭蕉レース象潟大会でチーム優勝、鳥海山ブルーラインヒルクライムで10代の部準優勝、秋田県高等学校新人大会登山体力競技(男子)で優勝。
去年は結構早く家から50分くらいで登って来たんですけれど、今年は一発目でちょっと慣らしながら来たので1時間弱かかりました。やっぱり大変ですね。きついっすね。慣れないですね。3年も登っているんで、筋肉痛にはならなくなりました。
大会に出ているような服装だけど。
去年の鳥海山ブルーラインヒルクライムで10代の部で準優勝しました。
※ 6月23日開催。新田君は1時間15分33秒で、ロード男子10代2位、総合順位は32位だった。登山口のある5合目まで標高差1100メートル、フルコース19・7キロメートル。平均勾配7・5%は日本最大級の平均斜度。
秋田トライアスロンは同級生とスイム、ラン、バイクの3人でチームを組んで優勝しました。
※ 7月21日、象潟海水浴場がスタート・ゴール。スイム1・5キロ、バイク40キロ、ラン10キロの合計51・5キロ。
陸上部と水泳をやっている同級生に半年くらい前から声を掛けて準備し、一発目で全ての世代で優勝しました。いきなりで驚かれました。
いつから自転車を始めたんですか。
中3の頃、お父さんの友達からロードバイクを譲ってもらって。家の前の道路がヒルクライムのコースなので、見ていて気になって。最初は遊ぶ感覚で、高校生になってレースに出ようと思いました。
目立ちたいとか、賞金を得て新しいバイクを買いたいとか。
賞金は出ないんですよ(笑い)。でもレースは結構レベルが高く、同等に走れるのはレースしかなくて。車を全部止めて、道路を120台くらいが登っていく。上りだけなんで、出る人も限られている。
練習時間は。
毎日、往復で70~80キロ。昨日は(山形県)酒田市まで往復75キロ走りました。1時間半あれば余裕でいけます。
自分は走りたい。ゲームとかしないんで。とにかく動いて体力づくりがしたい。コロナウイルスのためにみんな家の中に引きこもるんで。自転車なら他人と接触することがあまりなくて。
3密も避けられる、と。バイクの魅力に取りつかれたきっかけは。
ロードバイクをもらって少したって、お父さんから鳥海山の2合目まで一緒に行ってみるかと誘われました。それが楽しくて。鳥海山はきついと聞いていたが、登れば楽しい。達成感があって、この景色を見れて。やりがいですかね。足で走るのとは違って、スピードがあり、どこでも好きな所に行ける。
今年はコロナウイルスの影響でトライアスロンもヒルクライムも中止です。今年で自転車は最後かなと思っています。
プロになる気はない。
プロはきついですね。鳥海山へは、6月から雪が降る11月までシーズンになると、県外からも大勢来てバンバン走ります。
去年の7月、校長に勧められ山岳部に入りました。そうしたら、初めての大会、保呂羽山(ほろはさん)(横手市大森町、標高438メートル)の全県新人大会で優勝しました。12~13キログラムの荷物を背負って、登って帰ってくるまでのタイムを競います。全部走りです。いきなり出て優勝したので校長も親もびっくりしていました。
社会人になっても自転車は続けるんでしょう。
仕事が落ち着いてきたらと思うんですけれど、体力づくりやストレス解消法にもなるんで。学校では、体育祭や運動会が終わった後にも鳥海山に登りに来ていたんで。きついのはきついんですけど、心地よい疲れですね。家に帰ればすっきりするみたいな。
鳥海山に1週間に5、6本走れば体を壊しますね。一回、ヒルクライムのレース1カ月くらい前に体力付けるため攻めたんですけど、やっぱり体を壊して。せいぜい週2本くらいですかね。
怪我(けが)をしたら後遺症が残るでしょう。
去年は1回転んで事故りました。下りのカーブで動物を避けられなくて、対向車線に流れていって。ギアが壊れました。レース1週間前ですね。完治していなかったんですけど、包帯を取って走りました。結構きつかったです。足も怪我していましたから。
夕方に走るんですか。
平日は学校が終わってから、休日は朝から晩まで。秋田市内にもたまに行きます。
家はどこですか。
象潟の小滝(こたき)です。
小滝といえば、「小滝のチョウクライロ舞」(1200年の伝統がある国の重要無形民俗文化財、延命長寿の舞)が有名ですね。
小学校3、4年生の時にやりました。おじいちゃん、おばあちゃん(「祖父祖母の舞」)や4人(太平楽(たいへいらく)の舞)、6人(小児(ちご)の舞)も出ました。練習が大変だったです。子供なので、そんなに有名なものとは思っていなかった。
獅子舞は大人がやりますが、一昨年から御宝頭(ごほうとう)《獅子頭》の神輿(みこし)担ぎをやっています。金峰(きんぽう)神社から出てきて担ぐのは重くて大変ですが、なかなかできることではないので、良いことだと思っています。










