はやぶさ2、フロンティアの開拓を期待


 小惑星探査機「はやぶさ2」を載せたH2Aロケット26号機が打ち上げられた。天候の影響で2度の延期となったが、打ち上げは成功。はやぶさ2は目的とする小惑星「1999JU3」に向け飛び立った。

 数々のトラブルを乗り越え、「イトカワ」の砂を持ち帰った初代はやぶさの帰還から4年半。生命の起源を探る新たなフロンティアへ挑戦が始まった。

 水や有機物含む小惑星へ

 はやぶさ2は打ち上げから約3年半後の2018年に1999JU3に到着。1年半かけて観測や小型探査ロボットの投下、3回にわたる着陸と試料の採取を行う。採取後は初代はやぶさと同様、地球に帰還する。

 帰還は東京五輪が開催される20年暮れの予定。試料を入れたカプセルは本体から分離され、大気圏に再突入後、オーストラリアの砂漠地帯で回収する。初代はやぶさの本体は大気圏で焼失したが、はやぶさ2は燃料に余裕があれば、カプセルを分離後、別の小惑星に行く可能性もあるという。

 1999JU3はイトカワと同様、地球と火星の間にある。ただ、水をほとんど含まないイトカワと異なり、水や有機物を含む「C型小惑星」である。

 この種の小惑星は、地球に生命のもとになる有機物や水をもたらした可能性がある。科学チームを率いる大学教授は「特に有機物は海や生命の誕生につながる重要な証拠をもたらしてくれるだろう」と成果を期待する。はやぶさ2が運んでくる試料の到着が待ち遠しい限りである。

 探査、試料回収のため、はやぶさ2は、東日本大震災で被災した福島の企業が開発した装置を新たに搭載。火薬で加速する衝突体(インパクター)を小惑星の表面にぶつけて人工のクレーターをつくり、誕生時から性質が変化していない内部物質も採取する。衝突の様子は、はやぶさ2から分離したカメラで撮影する予定で、太陽系誕生直後に起きた小天体同士の衝突を推定する手掛かりにもなるという。その映像は、福島の復興を力づけるものとなろう。

 小惑星に到達、試料採取後地球に帰還するという史上初の試みを成功させた初代はやぶさ。姿勢制御装置の故障、燃料漏れ、イオンエンジン停止など数々の困難に見舞われ、まさに満身創痍(そうい)で帰還を果たした姿は国内外で感動と称賛を呼んだ。

 初代はやぶさでイオンエンジン開発を担当し、今回はプロジェクトリーダーの国中均宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授が「技術者としてはより洗練された完璧な物を作らないといけない」と語るように、はやぶさ2では経験を生かし、運用の工夫や予備の搭載、推力の向上などに努めた。トラブルは付きものだが、安定した航行技術の確立に力を奮ってほしい。

 ロケットの信頼性向上も

 今回の打ち上げでH2Aロケットは20回連続の成功で成功率は96・15%。担当する三菱重工業は今年度は5機の打ち上げ予定で、現場は嬉しい悲鳴を上げているという。

 短い準備期間にもかかわらず着実に成果を重ね、日増しに信頼性を高めている。さらなる努力を期待したい。

(12月4日付社説)