ひまわり8号の詳細な地球環境監視に期待
世界に先駆けて、次世代の高性能観測センサーを搭載した気象衛星「ひまわり8号」が、H2Aロケット25号機により打ち上げられた。
地球環境をより詳細に監視できるようになり、得られたデータはアジア太平洋を含む30以上の国々に提供される。天気予報の精度向上や防災などへの貢献に期待したい。
飛躍的に向上した性能
ひまわり8号は打ち上げから約10日後の16日ごろに、東経140度の赤道上空約3万5800㌔の静止軌道に到達。同軌道上で機能の確認試験を行った後、来年夏ごろに現在運用中の7号から観測を引き継ぎ運用を開始する。
性能が「次世代」と言われる所以は、その飛躍的な向上にある。画像が白黒からカラーとなり、解像度は2倍に向上。可視光では0・5~1㌔、赤外線や近赤外線では1~2㌔四方単位の、よりきめ細かい画像が取得できる。
地球全体を観測する頻度も、7号は30分に1回だったが、8号は10分に1回に増え、日本列島付近では2分半に1回の観測が可能という。また、撮影に使う可視光や赤外線の波長も、7号の5種類から3倍以上の16種類となった。
こうした観測性能の向上・強化により、台風の進路予測精度が一段と向上。また最近頻発するゲリラ豪雨や大雨をもたらす積乱雲の急速な発達をいち早く把握できる。画像のカラー化によって、積雪や海氷の分布を雲や霧と判別し、火山灰や黄砂などの拡散を監視する能力も高まった。
最先端の観測技術を持つひまわり8号は、米国や欧州などの他の次世代気象衛星に先駆けて運用を開始することから、国際的にも注目されている。
さらに見逃せないのは、国際入札が義務付けられている政府調達の実用衛星として、日本の三菱電機が受注に成功し開発した衛星であることだ。
三菱電機はひまわり7号で培った経験を生かし、性能を向上させるとともに、特に通信や放送など他のミッションにも対応できる標準衛星プラットフォーム(DS2000)を採用。衛星の基本構成を同一の設計に標準化することで低コスト、短納期、高信頼性を実現した。
1990年の日米衛星調達合意以降、事実上、政府の後押しを得られない中、独力で技術力を磨き、大きく水をあけられていた欧米に十分に対抗できる競争力を身に付けたのである。
これまでにDS2000を採用した衛星は16基を数え、このうち7基が既に打ち上げられて軌道上で順調に稼働している。2016年度に打ち上げ予定のひまわり9号も、これを用いている。
打ち上げたロケットH2Aは7号機以降、19回連続の成功で、成功率は96%と世界トップクラス。11月30日には26号機で、小惑星探査機「はやぶさ2」を打ち上げる予定である。
宇宙産業の振興図れ
わが国の宇宙産業は市場が縮小し、従事者も減少傾向が続く。宇宙活動法の制定を急ぎ、技術の維持・発展、産業の振興を図りたい。
(10月10日付社説)