【社説】まん延防止解除 若年層のワクチン接種加速を


新型コロナウイルス

 新型コロナウイルス対策として東京、大阪など18都道府県に適用されていた「まん延防止等重点措置」が21日を期限に解除される。重点措置がどの地域にも適用されていない状況は約2カ月半ぶり。感染への警戒を続けながら、少しずつ日常を取り戻していきたい。

 鈍い感染者の減少ペース

 全国の感染者数はピーク時の半分程度にまで落ち着き、地域によって差はあるものの、病床使用率や在宅療養者数も低下傾向が確認されているとの判断が基にある。政府は日常の回復、経済社会活動の活発化へより軸足を移したと言える。

 岸田文雄首相は「今後しばらくは平時への移行期間、すなわち最大限の警戒をしつつ、安全安心を確保しながら可能な限り日常の生活を取り戻す期間とする」と述べた。これから年度の変わり目や花見、行楽の季節を迎える。解除の解放感を味わいながらも、感染対策はしっかり行うことが肝要だ。

 今後の対策としては、これまでに準備した体制を堅持しながら、オミクロン株の特徴に合わせて強化していくとしている。具体的には、治療薬の確保、4回目接種に向けてのワクチンの追加購入、抗原検査キットの確保などが示された。

 日常生活の回復に関しては、イベント、旅行、大人数の会合などでのワクチン接種歴や検査キットの活用を推奨する。また、濃厚接触者となったために無症状でも仕事を休まざるを得ないケースが増えていることを踏まえ、待機期間の短縮を可能とする。過度な規制で経済社会活動が妨げられるケースが減るのは歓迎すべきことだ。

 「第6波の出口ははっきり見えてきた」(岸田首相)とはいうものの、新規感染者数の減少ペースが鈍いことが懸念される。理由の一つはワクチンの追加接種(3回目接種)、とくに若い世代への接種が十分進んでいないことが挙げられる。

 岸田首相は今月末には高齢者の約8割が接種を完了する見込みで、4月からは12歳から17歳への3回目接種も開始すると述べているが、追加接種を完了した人は18日時点で国民の33・3%に留まっている。

 とくに10歳未満の子供は新規感染者全体の約2割を占め、年代別で最も割合が高くなっている。厚生労働省の専門家会合では「新規感染者における10代以下の割合は増加傾向が続き、依然として高い水準」とし、「感染者の下げ止まりや増加の地域では10歳未満が増加していることが多い」と指摘している。

 子供への感染をどう抑えるかが第6波収束の鍵の一つだ。10歳未満のワクチン接種は対象となる741万人の1%ほどで、米国の26・8%、カナダの35・7%と比べるとかなり低い。

周囲に感染広げないため

 10歳未満への接種は、感染しても重症化しないことや副反応への警戒から、ためらう親が多い。しかし、接種は感染・重症化を防ぐだけでなく、何より周囲に感染を広げないという効果がある。学校へも安心して行くことができる。親にはこのような公共の観点を踏まえた判断を望みたい。推奨する厚労省も、その点をもっと強調すべきだ。