【社説】韓国大統領選 尹氏当選で日韓友好の復活を
5年に1度の韓国大統領選挙で保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦前検事総長が当選し、戦後最悪と言われる日韓関係の修復に向けた機運が芽生えている。ロシアのウクライナ侵攻、台湾への武力的威圧を強める中国、頻発する北朝鮮の弾道ミサイル発射など情勢が厳しさを増す中、日本や米国など民主主義国との連帯を広げて、アジア太平洋地域の安定と発展をもたらすことを期待したい。
共同宣言再確認を提言
岸田文雄首相は尹氏との電話会談で、重要な隣国として日韓両国が1965年の国交正常化以来の友好協力関係を基盤としながら関係を発展させていくことを呼び掛けた。尹氏も両国関係が重要との認識を述べ、対面による会談を早い時期に行うことで一致した。
尹氏は首脳シャトル外交の復活など日韓関係改善を訴えている。まずは首脳間の信頼関係を深めるところから冷え込んだ両国関係を修復し、互恵的な未来志向の関係を育ててほしい。
反日親北イデオロギーの左翼政権を率いた文在寅大統領の5年間の執政に対して批判が高まり、政権交代を求める有権者が過半数を超えたことが尹氏の勝因だ。しかし、文氏の後継候補で反日路線を踏襲した与党「共に民主党」の李在明前京畿道知事は、得票率差1ポイント未満の大接戦を演じており、尹氏の下で未来志向の対日外交が順調に進むか予断を許さない。
文氏の下で日韓関係は戦後最悪に後退しており、外交はまひしてしまった。文政権の反日政策は一方的で、長年の懸案だった慰安婦問題について朴槿恵前政権で最終的かつ不可逆的な解決を確認した両国の合意が反故にされた。
また元徴用工問題で、韓国大法院の判決により日本企業に実害が出る恐れのある韓国内資産の「現金化」は、65年の日韓基本条約締結時に日本が韓国に無償有償の巨額の予算を供与することで両国間の請求権を完全かつ最終的に解決するとした日韓請求権協定に反する。
今後、2カ月の政権移行準備を経て5月10日に尹氏は第20代大統領に就任するが、依然、国会では「共に民主党」が安定多数を占めている。尹次期政権は少数与党を基盤としながら、手強い野党を相手に国政運営を始動させなければならない。文政権の影響が残る韓国で厳しい対日世論が尾を引くことも予想される。
わが国としても悪化した両国民感情の鎮静化に向けて、冷静かつ真摯(しんし)に向き合う姿勢が求められよう。尹氏は98年の小渕恵三首相と金大中大統領による日韓共同宣言の再確認を提言している。歴史問題についてわが国の「反省とおわび」、両国の「未来志向」を明記した同宣言に立脚した両国関係の仕切り直しを軌道に乗せ、当時のように日韓友好を復活させるべきだ。
日米韓の関係強化は必然
ロシアの侵略が国際社会に大きな衝撃を与えた。冷戦時代の軍事的対峙は朝鮮半島でも続いており、今なお韓国は民主主義陣営の最前線にある。地政学上、同国の存在がわが国の安全に寄与しており、日韓および米国の関係強化は必然である。