6月日銀短観 ワクチン接種進め回復確実に
新型コロナウイルス禍にあえいでいた大企業非製造業の景況感が、5四半期(1年3カ月)ぶりにプラス圏に浮上――日銀が発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感の改善が続いていることを裏付けた。ワクチン接種が進展していることも大きな要因だが、一方で原材料の高騰や感染再拡大への懸念もあり、先行きは予断を許さない。
感染再拡大の様相示す
企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業でプラス14と前回3月調査のプラス5から9ポイント上昇。景況感の改善は4期連続で、2018年12月以来、2年半ぶりの高水準になった。
大企業非製造業も4期連続の改善でプラス1となり、20年3月以来5期ぶりにプラス圏に浮上。中小企業は製造業マイナス7、非製造業マイナス9と、いずれもまだマイナス圏だが、4期連続で改善を続ける。
大企業製造業は、米国や中国など海外経済の回復や国内設備投資の持ち直しを受け、輸出や生産が増加し、汎用機械や電気機械など大半の業種で改善。特に「幅広い業種のIT関連(分野)で改善が見られた」(日銀)という。
大企業非製造業は、製造業と比べ改善は小幅にとどまった。製造業の生産増加を受けて卸売りや運輸・郵便などが改善したものの、コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言再発令の影響を受け、小売りが17ポイント低下と大きく悪化。宿泊・飲食サービスは前回より改善したものの、マイナス74と引き続き低水準だった。
景況感が改善を続けているとはいえ、先行きに楽観は禁物である。一つは海外経済の回復による原材料価格の高騰である。このため、大企業製造業では収益に与える影響から木材・木製品や化学、食料品などが悪化を予想し、全体でも小幅悪化の見通しである。
大企業非製造業は先行き改善を見込むが、小幅である。コロナ禍の直接的な影響を受けた宿泊・飲食サービスは、前回調査で景況感が23ポイント改善すると見込んだが、結果は3分の1以下の7ポイントにとどまるなど、思い描いた回復軌道に乗れていないのが実情だからである。
しかも、ここへきて、東京などを中心に感染が再拡大の様相を示している。これが二つ目の懸念要因である。
6月の短観では、21年度の設備投資計画が大企業全産業で前年度比9・6%増と、前回調査の3・0%増から大幅な上方修正となった。実際にその通りに実施されれば、今後の経済回復に力強い援軍となり、心強い限りだが、前年度に見送った分の上乗せとみられ強いと言えるほどの結果ではないとの指摘もある。まして、原材料の高騰分を価格に転嫁できなければ、収益悪化から設備投資の減額は必至となろう。
経済正常化を目指したい
経済の回復にはワクチン接種の加速が不可欠である。東京五輪で首都圏、特に都内で人の移動の増加が見込まれ、感染対策の上で一つの試練だが、重症者数を着実に減らし、感染者数の増加を防ぎながら経済活動の正常化を目指したい。