各国海軍派遣、中国懸念する国際社会の抗議


 インド太平洋地域へ主要各国が海軍を派遣し、公海自由の原則など海洋秩序の維持に向けたデモンストレーションを強めている。中国の海洋進出を念頭に共同訓練を行っている日本、米国、インド、オーストラリアに加え、英国、フランス、カナダ、ドイツなどの連帯の動きを歓迎したい。自由で開かれた海を断じて守るべきだ。

南シナ海で「九段線」主張

 英国は最新鋭空母「クイーン・エリザベス」などの空母打撃群を来年初めに西太平洋に派遣し、朝鮮戦争当時の国連決議による国連軍地位協定に基づき、横須賀、佐世保、沖縄県のホワイトビーチなどで在日米軍の支援を受けながら長期滞在する方針だ。

 仏海軍は来年5月、ヘリコプター搭載型水陸両用艦、フリゲート艦から成る練習艦隊「ジャンヌ・ダルク」に士官候補生を乗せて日本に派遣する予定で、沖縄県・尖閣諸島など離島の防衛・奪還を想定した共同訓練を自衛隊・米軍と共に行う。

 今年11月には、インド洋で日米印に豪州も加えた4カ国海軍の共同訓練や、海自護衛艦とカナダ海軍のフリゲート艦による共同訓練が行われた。さらに、ドイツもフリゲート艦を派遣する方針だ。ドイツは秋に策定したインド太平洋政策の中で、これから経済成長が増していくインド太平洋圏を重視し、中国の覇権主義的な海洋進出を牽制(けんせい)する方針を示した。

 各国海軍の共同訓練がインド太平洋で活発化してきたのは、シルクロード経済圏構想「一帯一路」を打ち出した中国の海洋進出が、国際法に反して力による現状変更を伴うことを懸念したためだ。自由、民主主義の価値観を共有する主要国が中国に対抗して外交的結束を示すデモンストレーションであり、意味は大きいと言えるだろう。

 これまで中国は、仲裁裁判所が南シナ海において国際法の根拠はないと判決を下した「九段線」と称する領海線を頑迷に主張し、大部分の領有を訴えている。ベトナム、フィリピンなどと係争中の島嶼(とうしょ)を実力で占拠して自国への編入を進め、環礁を埋め立てた人工島を軍事基地化するなど、横暴なまでに実効支配を進めている。

 8月には中国本土から中距離弾道ミサイル4発を南シナ海に向けて発射しており、極めて危険だ。東シナ海でもわが国固有の領土である尖閣諸島の領有権を主張して周辺水域に海警局の公船を出没させており、台湾に対しても軍事演習を通して攻撃の脅しをかけている。

 さらに中国は、新型コロナウイルスの発生地である武漢市での世界保健機関(WHO)の詳細な調査を認めず、世界的流行で各国が非常事態の時に香港に国家安全維持法を施行して民主派を弾圧した。ウイグル族への宗教迫害や自由を抑圧する強権統治、サイバー攻撃など手段を選ばない知的財産の盗用などを世界の国々が危惧している。

 現状変更の試み抑止せよ

 わが国はインド太平洋地域の主要国として、日米安保体制を軸に各国海軍との共同訓練や防衛協力を推進し、中国の無謀な現状変更の試みを多国間の協力により抑止すべきだ。