座間事件判決 SNSの危険教育が必要だ


 人生に悩みを抱える若者の弱みに付け込み、自分の快楽のために9人を次々と殺害した「犯罪史上、まれに見る悪質な犯行」だった。座間9遺体事件の背景、とりわけSNS(インターネット交流サイト)利用に潜む危険性を教育現場で若年層にしっかり伝えることが急務だ。

 男女9人殺害で死刑

 神奈川県座間市のアパートで平成29年、15~26歳の男女9人が殺害された事件の裁判員裁判で、東京地裁立川支部は強盗・強制性交殺人などの罪に問われた白石隆浩被告に死刑判決を言い渡した。

 犯行の動機、被害者数、残虐性、社会的影響などを判断して「死刑をもって臨むことが真にやむを得ないと認められる」(判決文)との結論に至った。この前代未聞の犯罪に裁判員が真摯(しんし)に向き合った結果である。

 公判では、被害者が殺害を承諾したかどうかが最大の争点となった。弁護側は承諾殺人罪が成立すると主張していたが、自殺の意図があったとしても、想定とは懸け離れた方法で殺害されたなどとして、全員が「黙示を含め承諾はしていなかった」と認定された。

 被告は、ツイッターに「死にたい」などと書き込んで自殺願望を抱える若者に「一緒に死にたいです」とのダイレクトメッセージ(DM)を送って自分も悩んでいるふりをして近づいた。「精神的に弱っている被害者を狙い、言葉巧みにだました」(判決文)のである。

 わずか2カ月の間に、このような手口で9人もの若い尊い命が失われた。史上まれに見る卑劣な犯罪と言わねばならない。

 被告が特別に不幸な境涯にあったわけではないことを考えると、事件を被告個人の特異性で済ませることはできない。教育や社会に潜む暗部を極端な形で表したものとして捉え、考察する必要がある。

 事件のきっかけがSNSへの投稿であることも、社会への警告となっている。判決文でも「SNSが当たり前になった社会に衝撃を与えた」と言及された。被告は「当時のSNS事情は、弱っている人をだまそうとする人が多く、次々とできてしまった」と述べている。

 事件後、いわゆる自殺サイトなどへの監視が強化され、悩みを抱える人たちへの相談窓口が拡充された。しかし、SNSが青少年の性被害の温床になっている現状は変わらない。警察庁によると、SNSを使って昨年1年間に性犯罪などの被害者となった18歳未満の子供は2082人で最多となった。児童ポルノ被害に遭った子供も過去最高の1559人となっている。

 犠牲を無駄にするな

 SNSで人々の交流の可能性が格段に広がった一方、そこに潜む危険性への認識が不足している。とりわけ社会的な経験の少ない若年層は、悪意を持った利用者への警戒心が低い。

 犯罪被害に遭わないために、学校では見知らぬ人に声を掛けられてもついて行かない、暗い場所に一人で行かないなどの教育を行っているが、SNSの世界にも犯罪の危険が潜んでいることをしっかりと教えるべきである。事件の被害者たちの犠牲を無駄にしてはならない。