米国と台湾 来年以降も緊密な連携を


 米国はトランプ政権発足後、中国との新冷戦の激化を受け、台湾への積極的関与を進めてきた。中国の膨張主義に対抗する上で、米国には来年以降も台湾との緊密な連携が求められる。

 トランプ政権で協力加速

 トランプ大統領は2016年の大統領選を制した後、就任前の同年12月に台湾の蔡英文総統と電話会談を行った。就任前を含めて米大統領が台湾総統と電話でやりとりしたことが明らかになったのは、1979年の米台断交以降初めてだ。

 米台関係強化に弾みを付けたのが、2018年3月に成立した台湾旅行法だ。米国は台湾との断交後、一定の地位以上の米台高官について相互訪問を自主規制してきた。同法は「あらゆる地位の米当局者が台湾に渡航し、対応する台湾側当局者と会談する」ことや「台湾高官が米国に入国し、国防総省や国務省を含む当局者と会談する」ことを認める内容で、理論上は米大統領の訪台や台湾総統のワシントン訪問も可能になる。

 中国は将来の統一をにらみ、台湾にさまざまな形で圧力を掛け続けている。昨年年頭には、習近平国家主席が一国二制度による統一に言及するとともに、統一に向け「武力使用を放棄することは承諾できない」と強硬姿勢を示した。

 また「一つの中国」原則を受け入れない蔡政権を孤立させるため、経済力を背景に外交攻勢を強めている。蔡政権が発足した16年5月以降、7カ国が台湾と断交し、台湾と外交関係を結ぶ国は15カ国にまで減った。

 こうした事態は、日本にとっても決して人ごとではない。仮に台湾が統一されれば、中国の脅威は飛躍的に増大することになる。台湾と自由、基本的人権の尊重、法の支配などの普遍的価値を共有する民主主義諸国は、台湾を支え、中国の膨張主義に対抗していく必要がある。

 この意味で、台湾との連携強化を図る米国の動きは心強い。米国は18年9月、台湾と断交し、中国と国交を結んだカリブ海の島国ドミニカ共和国、中米のエルサルバドル、パナマの3カ国に駐在する大使や臨時代理大使を召還する対抗措置に出た。

 今年に入ってからも、アザー厚生長官、クラック国務次官(経済成長・エネルギー・環境担当)が訪台するなど、米台断交以降で最良とも言える関係を築いた。米台は11月、ワシントンで初のハイレベル経済対話を開催。米台で毎年相互に開いて経済協力を深化させることで合意し、覚書に署名した。科学技術や次世代通信規格「5G」、サプライチェーン(供給網)などの分野で連携を強化する。

 安全保障協力も進んでいる。米国は今月、台湾に新たに軍事用の野外通信システムを総額2億8000万㌦(約290億円)で売却することを決定した。米国から台湾への武器売却はトランプ政権発足後に加速し、今回で11回目となった。来年以降も連携を一層強化し、中国を牽制(けんせい)すべきだ。

 日本も関係強化進めよ

 同じことは日本にも求められる。日本は米国との同盟の下、政治、外交、経済、防衛などの各分野で台湾との関係強化を進める必要がある。