はやぶさ2 日本の宇宙探査の真骨頂示す
小惑星「りゅうぐう」の試料が入っているとみられるカプセルが、探査機「はやぶさ2」から分離され、計画通りにオーストラリア南部の砂漠に着地して宇宙航空研究開発機構(JAXA)により無事回収された。6年に及ぶサンプルリターン・ミッションの見事な成功である。
初代「はやぶさ」の経験を生かし、しかも少ない予算で世界に誇る成果を挙げ、日本の宇宙探査の真骨頂を示した。JAXAをはじめ関係者のたゆまぬ努力に敬意を表したい。
チームワークで技術確立
「完璧な状態で帰って来た」――JAXA相模原キャンパスで記者会見した津田雄一プロジェクトマネジャーは、はやぶさ2とカプセルについてこう説明し、今回の成功を「小惑星に自由に行き来する技術を実現した」と評価した。
りゅうぐうの試料が回収できていれば、2010年に初代はやぶさが小惑星「イトカワ」から持ち帰って以来の快挙となる。2度の着陸や人工クレーターの作成にも成功しているから、試料回収はほぼ間違いあるまい。津田さんは「玉手箱を開けるのが大変楽しみ」と期待を込めたが、国民の多くも同じ気持ちであろう。
初代では回収装置が十分に作動せず、着地後に姿勢を崩すなどトラブルにも見舞われ、回収試料は微粒子にとどまった。今回は「目で見える粒が入っていると期待している」と分析担当の関係者を喜ばせている。
有機物や水を含むとされる炭素質(C型)小惑星からの回収は世界初である。約46億年前に太陽系が生まれた当時の姿をとどめていると考えられており、太陽系の成り立ちや生命の起源に迫る手掛かりになるという。カプセルは8日にも相模原キャンパスに搬入され、試料の分析が始められるが、今後の分析結果が大いに楽しみである。
また感動的だったのは、小天体から試料を持ち帰るサンプルリターン技術を見事なまでに確立したチームワークと、初代のトラブルを糧に培った訓練の豊富さである。
津田さんは会見で「想定通りでは済まないと想像し、チームワークを磨いた。幸か不幸か、りゅうぐうは想像を超えて厳しかったが、訓練が役に立った」と淡々と話したが、そうした訓練があったればこそ、1回目の着陸のトラブルの際にも、最終的には予定通りの約1㍍の誤差で着陸できたのである。
ただ、感動の余韻に浸ってばかりはいられない。はやぶさの成功以来、米航空宇宙局(NASA)や欧州、中国などが小惑星探査に乗り出しているからである。日本の“お家芸”とも言えるサンプルリターンでも、10月に米探査機「オシリス・レックス」が小惑星「ベンヌ」に着陸して試料採取するなど、日本を激しく追い上げてきている。
経験つなげ独自色発揮を
はやぶさ2はパワーアップしたイオンエンジンとほぼ完璧な任務遂行による余力を残し、次なる小惑星「1998KY26」に向かった。初代の経験を基に、初代とは違う新しい地平を拓(ひら)いたのである。他の探査計画においても、経験をつなげながら独自色を発揮してほしい。