改正種苗法 農産物守って輸出拡大を


 ブランド果樹など新品種の農作物の海外流出防止を目的とした改正種苗法が、先の臨時国会で成立した。一部を除き、来年4月1日に施行される。

 日本で開発されたブドウやイチゴなどの無断栽培が海外で相次いでいる。政府は種子や苗木の保護を徹底して農産物の輸出拡大につなげるべきだ。

 開発者が栽培地を限定

 種苗法は新品種を知的財産として保護するものだ。種苗法に基づく品種保護制度は開発者に対し、穀物などは25年間、果樹は30年間、種子や苗木を独占的に販売する権利を認めている。

 ところが現行法では、種子や苗木を国外に持ち出すことを止めることはできない。このため、国の研究機関が30年以上かけて開発した高級ブドウ「シャインマスカット」の苗木が中国と韓国に渡り、現地で無断栽培されるなどの事態が生じた。

 長年の多大な努力によって生まれた優良品種が、海外に流出することを見過ごすことはできない。割安な中韓産が東南アジア市場で流通していることが、高価な日本産の同市場への輸出拡大を妨げてもいる。こうした事態に歯止めをかけるための法改正は当然である。

 改正法では、開発者が新品種の栽培地を国内または特定の都道府県に限定し、違反行為に対して差し止め請求できるようになった。利用者が大量に海外に持ち出すなどの悪質な行為に及んだ場合、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科される。

 一方、第三者に種苗が渡る恐れを軽減するため、農家が収穫物から採取した種子を翌シーズンに使う「自家増殖」にも制限をかけた。もともと改正法案は今年の通常国会に提出されていたものの、この制限によって「農家の負担が増える」との懸念が広がったことで審議入りが見送られた経緯がある。

 もっとも現在でもイチゴなどの登録品種の場合、農家は開発者の許諾を受けて自家増殖している。ほかの登録品種については、改正法施行後は許諾を得ることが必要になるが、許諾料はもともと種苗費に含まれている知財相当分を参考に設定されるとみられている。

 許諾の手続きも団体などがまとめて行うことができ、費用や事務に関する農家の負担が大きく増えることはないという。政府は農家の不安を払拭(ふっしょく)して改正法への理解を得るため、こうしたことを丁寧に説明しなければならない。

 政府は農林水産物・食品の輸出拡大に向け、和牛を含む牛肉やホタテ、リンゴ、ブリなど27品目を重点品目と決め、生産体制強化への集中支援を盛り込んだ実行戦略を策定した。輸出額を2025年に2兆円、30年には5兆円に引き上げる目標を掲げている。

 日本ブランドの向上を

 和牛をめぐっては今年4月、受精卵や精液(遺伝資源)の保護を強化する関連2法が成立した。海外に不正に持ち出した場合、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金を科す。

 今回の改正法と共に食品の輸出拡大につなげ、国際社会で日本のブランド農産物の存在感を高めていくべきだ。