鳥インフル拡大、迅速な対応で封じ込めよ


 国内の養鶏場としては先月、2年10カ月ぶりに発生した高病原性鳥インフルエンザの感染が広がっている。

 殺処分される鶏は200万羽以上に達し、過去最多となる見通しだ。養鶏農家はもちろん、国や自治体は警戒を強める必要がある。

 殺処分数は200万羽超

 鳥インフルは野鳥や小動物などを介して感染し、国内では渡り鳥が飛来する秋から春に蔓延する傾向がある。毒性が弱い低病原性に対し、感染すると高い確率で死亡するタイプは高病原性と呼ばれる。

 今回検出されたウイルスは高病原性の「H5N8型」だ。先月の香川県での発生を皮切りに、福岡、兵庫、宮崎、奈良、広島と西日本の6県に感染が拡大している。

 最初に発生した香川県三豊市の養鶏場では、自衛隊の協力によって33万羽を殺処分した。その後も同市ではわずか2週間余りの間に、最初の発生地から半径3㌔という狭い域内で7例が続発している。

 香川には農業用ため池が都道府県で3番目に多い約1万4600カ所あり、ため池に飛来した渡り鳥の間で感染が広まったようだ。国内の養鶏場で鳥インフルが発生したのは2018年1月以来。この時も香川県の養鶏場が舞台となった。

 これまで殺処分が最も多かったのは、10年から11年にかけて宮崎や三重など9県で発生が相次いだ際の約183万羽だが、今回は既に200万羽を超えている。被害のさらなる広がりが懸念される。

 農林水産省によると、欧州で大流行しており、ユーラシア大陸から日本に飛来した渡り鳥がウイルスを持ち込んだ可能性が高い。北海道や鹿児島県でも野鳥のふんなどからウイルスが検出されている。

 鳥インフルが発生したことによって、急拡大していた鶏卵輸出はいったん停止となった。長期化すれば、国が掲げる食品の輸出拡大戦略にも影響を及ぼす恐れがある。

 野上浩太郎農水相は「全国どこでも発生のリスクがあるという認識の下、管理を徹底してもらいたい」と述べ、全国の養鶏場に対策の自主点検をするよう求める考えを示した。自主点検は従業員の手や指の消毒、手袋・衣服・長靴の交換、野生動物の侵入を防ぐネットの設置、出入りする車両の消毒などを行っているかを調べるものだ。

 これまでに感染が確認された養鶏場では、鶏舎に野生動物が侵入できる隙間が空いているケースもあったという。これではウイルスの蔓延(まんえん)を防ぐことはできない。対策を徹底し、感染拡大を封じ込めるべきだ。

 もちろん、迅速な殺処分や消毒などの初動対応も重要だ。養鶏場で鶏の大量死などが生じた場合は、鳥インフルを疑って速やかに都道府県などに通報しなければならない。

 正確な情報の発信強化を

 養鶏農家からは風評被害を心配する声も上がっている。しかし、国内では鶏肉や鶏卵を食べて感染した事例はない。国や自治体は正確な情報の発信強化に努め、消費者の不安を払拭する必要がある。