ベルリン慰安婦像 日本との合意を蔑ろにするな
ドイツの韓国系市民団体「韓国協会」が首都ベルリン市内の公有地に、いわゆる従軍慰安婦問題を象徴する像を設置したことに対し、地元当局が設置許可を取り消して撤去を求めたと発表した。海外の公共の場での像設置は2015年の日韓慰安婦合意に明らかに反する。韓国政府が合意を蔑ろにする態度には目に余るものがある。
海海外で批判しない約束
問題の像は先月、地元市民や政治家らが出席する中で除幕式が行われ、その存在が明るみになった。像設置が日本の反対で実現できなくなる事態を避けるため、密(ひそ)かに計画を進めたとみられている。
市民団体は地元当局への説明で、像が日韓の外交問題に発展する恐れがある点には触れなかったようだ。設置許可を出した同市ミッテ区は当初、広い意味で戦時下の女性への性暴力に抗議の意思を示すのが像設置の趣旨と理解し、それが日韓間の懸案として関係をさらに悪化させるものだという認識はほとんどなかったからだ。
茂木敏充外相はドイツのマース外相とのテレビ電話会談で、像の撤去を求めた。日本から強い抗議を受け、地元当局が設置許可を取り消したのは当然だ。
ドイツで同様の像は3体目だが、公共の場所に建てられるのは今回が初めてだ。韓国政府としては民間が地元当局との話し合いを通じ建てたものには干渉できないと主張したいだろう。だが、海外でこの種の像が設置されるのを黙認すること自体が問題だ。
日韓慰安婦合意で両国は、国連や国際社会で同問題をめぐり互いを非難、批判することは控えることにしたはずだ。韓国の文在寅政権は、合意に基づき韓国内に設置された慰安婦支援財団を解体したのをはじめ合意を一方的に反故にした。今回の像設置も合意無視と言えよう。
わざわざ第三国に日本との懸案を持ち込むことも国際社会の一員として成熟した態度とは言えまい。これまでにも韓国は国際機関などで反日的な主張を訴え、同意を求める場面が頻繁に見受けられたが、国家イメージの失墜につながるだけだ。
市民団体は像を「芸術作品」と説明したようだが、ここ数年、日韓関係悪化の原因の一つとなり続けてきたという点で、およそ芸術には程遠い。真相を知ったドイツ国民は驚いたのではなかろうか。
韓国外交部は日本がドイツに像撤去を要請したことについて「日本自らが表明した反省の精神に逆行する」と批判したが、全く説得力に欠ける。
反省の意を示した上での合意であり、その合意をもって「最終的かつ不可逆的に解決された」はずの問題を韓国が第三国で蒸し返したことに抗議するのは「反省の精神」とは関係ない。
海形骸化を進める韓国
合意では、ソウルの日本大使館前の像撤去に向け、韓国が市民団体との協議を通じて適切に解決されるよう努力すると約束したが、協議すらなされていない。釜山の日本総領事館前の像は地元自治体が設置を合法とする条例を作ってしまった。合意の形骸化を進めるかのような韓国の姿勢には強い危惧を抱く。