中国のサイバー軍事利用
米国国防情報局(DIA)が1月に出した中国軍事力報告書によると、人民解放軍(PLA)の指導部は敵側に匹敵する軍事力を誇っている。
中国の2018年度軍事予算は2000億ドルを超え、02年比3倍の増額だ。2000年から06年までは年10%増、過去2年は5~7%増だった。
同報告書には、米国の世界における軍事力の座を中国に明け渡すことはしないという焦りに加え、国家権力の中心にある中国国務院による政策の下、ビジネス、軍事、外交を統合する中国のアプローチにより現在の安全保障システムは崩壊するというジレンマが浮き彫りになっている。
DIAは、中国の軍事近代化は大規模な世界規模の戦争を念頭に置いて行われたのではなく、むしろ地域への挑戦のためであり、地域の戦争につながると結論付けている。
中国の軍事近代化の大部分は台湾に焦点を当ててきたことを指摘しており、習近平主席が1月2日に台湾は中国の一部であると断言し、中国には台湾を支配下に置くための武力行使の権利があるとの立場を改めて示したことと一致する。これは中国を牽制(けんせい)する米国にとって悪い材料だ。
米軍上層部はPLA上層部が急速な軍事能力を増し続ける中で、軍事分野においてより大きな発言権を持ち主張する中国に直面するという懸念を抱いている。具体的には中国軍事技術の多くが成熟するにつれて、軍隊の再編成が効力を発揮するにつれて、中国が軍事力行使をする可能性が高い。
中国は情報空間において優位に立つことを決意、将来の対立に備えサイバー能力の配備に重点を置く模様だ。全地球測位システム(GPS)やセンサーのような敵の裏をかく軍事システムで敵をくじく。軍用の無線データシステムの一つである統合戦術情報伝達システムを駆使し、敵側の的を絞る狙いだ。現代の戦争をシュミレーションした際に最も重要な情報空間をコントロールする。
この報告書で注目すべきはPLAが軍事作戦に当たり、サイバーの能力を主に以下の3点で利用することである。
①サイバー攻撃力の向上をサイバー諜報(ちょうほう)に依存②対立が起こった際、早い段階で敵側の行動を阻止、情報戦活動を緩慢化させる情報空間における支配権を確立③対立時に従来の戦闘能力にサイバー能力を掛け合わせマルチプライヤー(乗数)としての機能に期待―。
15年に中国はサイバー、宇宙、電子戦、指揮統制および情報運用を鑑み、情報関連の全ての機能を再編成および統合し、単一の組織の下に置いた。
16年1月、中国の国営新華社通信によると「陸軍司令」「ロケット軍」「戦略支援部隊(SSF)」の3組織を新設した。49年以来の大規模な軍の組織改革と言われている。
このうちSSFは習主席が「国家の安全を守る新型の作戦勢力であり、質的にわが軍の新しい作戦能力の重要な成長点だ」と述べていることから、サイバー攻撃や宇宙での攻防、および電子戦の任務を結び付け、サイバー偵察、攻撃、防御能力を統合したサイバー部隊の開発を試みるもようだ。
サイバー戦争能力を利用してデータを収集し、通信、および物流、商業活動をターゲットにして非常時における敵側の行動を制限したり、動的攻撃と組み合わせ、乗数効果を図るものだ。