サイバー攻撃の脅威 集団的自衛権で有効対策
想定を超える攻撃力
安倍総理が集団的自衛権(限定)の行使を閣議決定した。集団的自衛権は、<新たな脅威>であるサイバー攻撃という視点で見ることが大切である。
我々は、電気・水道・通信(スマートフォーンなど)などの重要インフラを、情報技術によって利用している。もし、一時的にでも重要インフラの利用が止まったならば、パニックに陥るだろう。このような潜在的な脅威が、サイバー攻撃と呼ばれるものである。
現実のサイバー攻撃は、我々の想定を超えるものである。典型例としては、イランの核施設をピンポイントで狙ったスタックスネット(Stuxnet)がある。スタックスネットとは、インターネットに接続していなくても、USBなど経由で、制御装置に攻撃を加えるマルウェア(コンピュータウイルス)である。
最近のサイバー攻撃例としては、首相官邸の屋上に侵入したセシウムが付随したドローン(小型無人機)が挙げられる。今回の攻撃方法は、平成7年に東野圭吾氏が発表した『天空の蜂』(講談社文庫)を模倣したものである。
では、サイバー攻撃を防ぐ手段はあるのか。サイバー攻撃を完全に防ぐ手段はないが、集団的自衛権は有効な対策手段である。
安倍総理が限定的とはいえ、集団的自衛権の行使に踏み切ったことは、情報化社会が進む世界に取り残されないための大きな政治的決断だ、と評価して良い。反対派は、情報化社会の未来が分からない、ガラパゴス化した人々である。
安倍総理は、トップの揺るぎない意志がない限り、有事の際には様々な防衛システムに障害が起きた場合、対処できないことを熟知していた。安倍総理は平成26年5月12日、「日イスラエル首脳会談」で、ビンヤミン・ネタニヤフ首相とサイバー攻撃対処の連携という形で国民に示した。米国と同水準のサイバー攻撃技術を保有するイスラエルと、包括的パートナーシップを結んだことは素晴しい外交である。なお、イスラエルは米国と共同し、イランに対して、スタックスネットを仕掛けたと言われている程、サイバー攻撃のレベルは高いと言われている。
もし、安倍総理が集団的自衛権の行使容認に踏み切らなければ、将来的には、サイバー・ストームに招かれなくなったかもしれない。サイバー・ストーム(サイバー戦用の演習)とは、米国土安全保障省が、米国防総省などと実施している官民連携演習である。参加国は、米国と日本以外に、英国・独国・仏国などが参加をしている。サイバー・ストームには、現在、中国からサイバー攻撃を頻繁に受けていると主張する台湾が、参加を申し出ているが認められていない。
情報化と憲法の乖離
最後に、現代では情報技術の進歩が、サイバー攻撃など軍事技術に変化を与えた。そのため、日本国憲法や武力紛争法(国際法)など、旧来の「戦争」概念では対処できないような「戦争」が起きている。このような状況下で、「自衛権」の議論をする際には、机上の空論は排除されなければならない。例えば、某国がドローンなどで、都内の主要な繁華街にサリンを散布する。
次に、特殊部隊が霞ヶ関周辺などで市街戦を起こした場合、あるいは特殊部隊が東京電力にサイバー攻撃を仕掛けて電力を止めた場合、日本政府は「自衛権」を行使するのであろうか。
このような国民目線に立った具体的な例示であれば、日本国憲法は現状維持でよいのか、平和安全法制の整備で済ますのか、憲法を国民の手に取り戻すために憲法改正が必要、など国民が憲法問題に対して判断ができるのである。