共産党の「マイ名簿」 崩れる票割り選挙の鉄則

パフォーマンスに走る

 統一地方選挙が近づいている。共産党が議席を増やすかどうかが焦点の一つである。共産党は地方議員第一党の奪還を目指している。しかし、市町村議員は圧倒的に無所属が多く、ほとんどは保守系である。党派に所属している議員の中で共産党に所属している議員が多くなったからといっても言葉のレトリックにすぎない。

 共産党は安倍内閣打倒の国民運動と靖国派の一掃を公然と呼びかけているが、国民の支持を本当に得られているかどうか疑問である。池内さおり国会議員がツィッターで、過激派組織「イスラム国」(IS)による日本人への残虐事件に際して、ISをまったく非難せずに安倍首相を非難して、不適切だと志位委員長の謝罪会見になった。比較的若い日本共産党活動家が安倍首相をヒトラーに例えるなど過激な行動に走り、保守派への暴言や人権弾圧が続くことになれば、国民の支持を失うだろう。

 先日私は、商社九条の会・東京の講演と平和講談のつどいに、前中国大使・元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎氏の講演を聞きに行った。丹羽氏は、安倍「独裁」政権よりも中国独裁政権の方が明るくていいなどと語っていた。しかし、500人弱の参加者はほとんどがお年寄りばかりで若い人の姿はまったくなかった。丹羽氏が激しい安倍政権批判を繰り広げても拍手は起きなかった。

 私の予想では共産党の地方議員数は微増にとどまる。理由は、共産党の芸術的と言われた票割りが崩れるからである。これまで、共産党には鉄の規律があって、有権者にはその有権者が住む地域を担当する地方議員が投票依頼をして、結びつきを強めるというのが鉄則であった。たとえ、ある地方議員の数十年の親友であって同じ自治体に住んでいても、担当の地方議員が違えば、その人に紹介し、その人から投票依頼をし、その人との結びつきを強めていくというのが鉄則であった。そうすることにより、共産党は組織を維持してきたのである。そして、ある自治体で共産党に4万票入ると読めば、きれいに8000票ずつ票を得られるように五つの地域に分割し、それほど得票数の上位でないところに5人全員を当選させてきた。

 しかし、「マイ名簿」の導入により党員が自由に知り合いに投票依頼などをできるようになった。しかも、支部に誰に投票依頼をしたかとか、どこに住んでいるかなど、いっさい報告する義務はない。これでは、有権者が住む地域を担当する地方議員への投票依頼がきちんと行われない。自民党や民主党のように地方選挙でベテラン議員がまさかの落選をするように共産党のベテラン議員も落選するようになる。パフォーマンスが得意な候補者が票を得るようになるから共産党の地方議員も個人的なパフォーマンスを好むようになる。独自色を出すようになり、地道な赤旗などの勧誘活動を嫌うようになる。組織崩壊である。

 共産党は「躍進」と大本営発表しているが、そもそも最近の都議選や衆議院選挙は、投票率が低かった。低投票率から先日の国政選挙で組織票を持つ共産党が議席を大きく増加させてしまったのである。それをメディアがきちんと報道していない。

資産を遺贈する党員も

 共産党は職場支部の消滅、居住支部の崩壊、赤旗早朝配達が不可能になり郵送地域の増加など問題が山積みである。加えて、お亡くなりになった党員が、遺言による土地や建物の遺贈を共産党にする事例が増加し、相続の権利のある親族が不満をもらすなどの事例が増えてきている。日本共産党の崩壊は不可避である。