香港に及ぶ共産党支配 国際法を守らない中国
米台の選挙にデモ影響
2014年9月27日より始まった香港民主派のデモは12月11日、警察の強制排除で終了させられたが、重大なメッセージを世界に発信した。
中華人民共和国は、“極少数の共産党リーダーが憲法と法律を支配”する“共産党の支配”を信仰する国家であり、当然、他国との条約や国際法も中国共産党が支配する。中国は“法の支配”という「自由と民主主義の伝統」を“敵の中の敵”としている。このことは、中国が「世界の平和秩序に貢献する国家」になれるどころか、逆に、信念をもって紛争や戦争を起こす国であることを意味する。
香港デモは、まず台湾の国民を目覚めさせた。その影響は11月29日に、台湾総統選の前哨戦とされた統一地方選挙の結果として表れた。馬英九総統が率いた与党・国民党が大敗した。中国への接近路線を突っ走る国民党政権に対し国民が「不信感と恐れ」を持ち、かつ拒絶したと捉えるべきである。台湾の国民は自分たちの未来を「現在の香港」に重ね、中華人民共和国が「一国二制度」を厳守することなどあり得ない現実を眼前に示された。
元中国軍事科学院院長・劉精松氏は中国人民解放軍の「本音」に近い発言をすることで知られている。彼は「中国が台湾問題を未解決のまま長期間放置することはない」(人民日報12月7日)と指摘し、更に「中国は力の行使の可能性を排除しないし、必要ならば武力による問題解決も選択肢の一つである」(環球時報)とも発言している。中国政府が代弁させ、台湾に方向転換をさせまいと「脅迫」したものである。
米国では11月4日、中間選挙が行われた。香港の「雨傘運動」はこの選挙にも大きな影響を与えたようだ。オバマ政権と民主党指導部の対中外交政策に対する反発が大きな要素の一つとなった。上院は共和党が54議席(定数100)で過半数、下院も共和党247議席(定数435)で過半数を獲得、両院とも共和党が勝利した。更に州知事選、州議会選挙も共和党が大きく躍進した。中国にへつらうオバマ大統領とその側近らを米国民は見捨てたのだ。
しかし、北京APEC(11月10~12日)に出席したオバマ大統領は、習近平国家主席との首脳会談で「香港の学生デモは中国の国内問題である。ただし米国は原則として法の支配による高度な自治と民主主義を主張し続ける」と発言し、「香港の学生たちを助けない」とあえて意思表示をした。
「法を支配」する共産党
中国は、香港抗議デモの真只中に「英国との締結協定(中英共同宣言1984)が香港の返還(1997)により既に無効となっている」と英国議会に通告した。これに衝撃を受けた英国下院外交委員会議員団が、香港の学生抗議運動の状況視察のため訪中しようとしたが、中国に入国を拒否された。
香港はアヘン戦争以後99年間租借地として英国主権のもとにあった。香港を中国に返還するに当たり、香港市民の自由と民主主義を心配した英国は「中英共同宣言」を締結した。そこに至る過程では、英国のパッテン総督・香港市民と江沢民政権・当局との間で激しい対立があった。
共同宣言は、「一国家二体制を維持、50年間は資本主義体制を保証、ストライキ権を保証、香港特別行政区長官は選挙または協議によって選出され,中央人民政府が任命する」等を公約する国際協定だ。しかし、中国により一方的に「無効」にされた。英国議会は「あまりの非常識」と怒ったが、英国は中国の横暴に何もできないだろう。
現在、中国の大学では普遍的価値観を論ずることが徹底的に禁じられている。理由は「法の支配」への中国人の願望により「共産党による憲法、法律、条約、国際法の支配」が崩壊させられることを防ぐためである。国際法や条約に従うのは自分が弱い時のみである。