軍事力を削減する米国 オバマイズムに備えよ
日米安保は発動するか
オバマ米大統領は任期を2年以上残しているが、もうすでにレームダックと化している。しかし、同氏とその政権スタッフは自らの国防戦略の宣伝を開始したようだ。
オバマ大統領は5月28日、ニューヨーク州の陸軍士官学校卒業式で演説し、「米国に直接攻撃がなければ、軍事力使用の敷居を上げる」、「外交や制裁や孤立化策を用い、国際法規に訴え、真に必要な場合も効果的で多様な軍事行動を最後の手段とすべきだ」、「幅広い軍事介入よりも外交努力や的(まと)を絞ったテロ対策に米国の資源を使うべきだ」などと訴えた。
ウクライナでロシアが力で他国の領土を併合し、南シナ海でベトナムに対し中国が露骨な力の行使をしている最中にそのような演説をしたのだ。このオバマイズムは、実際、正義が力で踏みにじられているそれらの地域で実践されてきた。威勢のいい演説はするが、同盟国(NATO諸国)の責任遂行を要求し、確固たる実力行使をしないことを“善し”としている。中途半端な経済制裁、国際世論の圧力、外交的対話に世界の運命を委ねている。
厄介なのはオバマ大統領が自分の外交・国防哲学に確信を持っていることだ。ロシアのプーチン大統領、シリアのアサド大統領、そして中国の習近平主席はもろ手を挙げ歓迎し、喜んでいることだろう。
米紙ワシントン・ポストが、オバマ氏の外交政策を激しく批判している。「大統領はこの5年間、現実ではなく、彼が考える“世界のあるべき姿”に基づいて外交を行ってきた。“彼の認識する世界”とは、“戦争の潮は既に引いており、米国は軍事力を削減できる。他国の指導者は合理的で、国民と世界のために行動している。侵攻、露骨な力の行使、大国間のゲームなどは過去のこと…」(3月3日社説)とオバマ外交の本質を分析している。
悪いことに、これに加え三つの要因が米国を内向きにしようとしている。イラクとアフガン戦争の長期化が米国世論をして海外での戦争を避けるようにさせた。またシェールオイル・ガスの発掘に成功し、その大輸出国になろうとしているため、中東が米国にとり死活問題の地域でなくなりつつある。米国の敵に対して米本土から出撃して対応しようとする国防戦略が、国防総省、軍儒産業関係者、エスタブリッシュメントリーダーたちにより真剣に準備されつつある。
ロシアと中国は、米国と逆に勢いに乗り領土領海の拡張政策に乗り出している。彼らは「オバマ政権は武力による実力行使をする決意がない」と確信している。日本は集団的自衛権の行使に対する憲法解釈の変更をしたが、それは第一歩であり最低条件だ。それでも日本は今や、安保条約が有効に発動せずに単独でも自国を防衛せねばならないという極めて蓋然(がいぜん)性の高い状況に直面している。
ミサイル防衛の強化を
中国が行動する際に採用する戦略は大規模な奇襲攻撃である。大量の巡航ミサイルと弾道ミサイルによる飛行場および軍事的戦略拠点への攻撃だ。中国の海上戦力や航空兵力では自衛隊の精強な海空戦力に撃退され大恥をさらすことになる。日清戦争の二の舞いとなりかねない。まず圧倒的な航空優勢を確保するべく、大量の各種ミサイルで日本列島の航空拠点を破壊しようとするだろう。
日本は緊急にミサイル防衛システムを強化せねばならない。もちろん、これまで減少し続けてきた防衛予算の増大と陸・海・空の戦力強化は当然だ。しかし、ミサイル防衛システムの広範な構築が日本を救うことになるだろう。それが攻撃的国家の意思を挫くことにもなる。