北方領土復帰へ新戦略を 露米、露中の交渉をヒントに


「引き分け論」の活用

 戦後まもなく70年になるのに「北方領土返還」交渉は未解決のままである。日本には、日本固有の領土である「4島返還論」は正論であるから、粘り強くひたすら固守していれば、いつかロシア側が折れるに違いないとの思い込みがあったが幻想に終わった。

 日露領土返還交渉において、原則論を超えた「政治的新提案」がなかったことが、反省の材料であると思う。最大の未解決の課題であるのにも関わらず、知的怠慢が招いた悪しき結果だ。

 今や日本は、核先軍国家・覇権主義中国の厳しき現実を直視すべき時でもあり、領土返還を期待する日本側は、より強力な覚悟をもって交渉にあたるべきだ。領土問題を含んだ平和条約交渉は一種の外交戦争でもあるが、共生共栄の精神が重要であり、ウイン&ウインでの結果を目指して、領土問題を解決して、平和条約締結にこぎつけてほしい。

 岸信介氏は「日米安保改定交渉」に政治生命を懸け、佐藤栄作氏は「沖縄返還交渉」に政治生命を懸けた。安倍総理は、「北方領土返還」と「日露平和条約締結」に政治生命を懸ける覚悟で取り組み、道が開かれることを期待している。

 現状を打開するために革新的な、条件付き「新・四島返還論の提案」を論じてみたい。詳細は割愛するにしても、歴史の経緯から「南樺太」と「全千島=千島列島および北方四島」の返還が「正論」であると主張できる根拠もある。故に日本は既に政治的妥協を踏まえていたのだ。

 そこで、北方領土返還に関する幾つかのケースを列記して、返還交渉を打開するための提言「条件付き『新・4島返還戦略』」を考えてみたい。

 ①南樺太&全千島の返還を主張し続け交渉にあたる。

 ②南樺太&千島列島をロシアに譲歩して、択捉、国後、色丹、歯舞の我が国固有の「北方4島の一括返還交渉」で返還を勝ち取る(日本政府がこれまで取り組んで来た日露交渉)。

 ③かつてからのロシア主張である「色丹、歯舞2島返還論」での決着。

 ④4島の日本帰属の明確化による2島先行返還論(日本側の妥協案)。

 ⑤プーチン大統領の言う日露引き分け論。

 中露紛争地であったダマンスキー島は1995年に大まかな引き分け論で中露間の交渉がまとまった。これがプーチン引き分け論に寄与している。

 (ア)引き分け作戦1:面積半分で国境線を引く(択捉島内南方に日露の国境線が定まり陸地が国境線になる)。

 (イ)引き分け作戦2:国後島と択捉島の間にある「国後水道=海峡」に日露の国境線を引くことで択捉島を放棄する。

 ⑥日露引き分け作戦&米露アラスカ購入作戦:ロシアは米国に1867年にアラスカを売却し、アラスカは以来購入したアメリカの領土になった。⑤(ア)、⑤(イ)を見通して、アラスカをアメリカが買収したように条件付き「3島返還」プラス条件「択捉買収返還」の方策を決める。(択捉島をロシアから購入)

平和条約のチャンスに

 ロシアのプーチン大統領の実権は現在強い。彼が日本柔道愛好者でありロシアでは比較的に日本の理解者である。日本も安倍内閣は政治的な安定期を迎えている。日露の領土問題解決と平和条約締結の一大チャンスである。

 そこで私の提案だが、ロシアと中国が国境問題を解決していった「引き分け作戦」=国後、色丹、歯舞3島返還に、ロシアと米国での領土交渉に準じて「択捉島を再度購入」する「択捉島の購入約束を条件」にした「条件付き『3島返還』プラス条件『択捉島購入』」論を提言する。

(2月7日「北方領土の日」記)