日本国憲法の欺瞞、独立国家否定する9条2項

149ヵ国に平和条項

 日本には、日本国憲法が世界で唯一の平和憲法であり、第9条のおかげで、日本は戦争に巻き込まれないと真面目に信じている人たちがいる。

 しかし、成文法で平和主義条項(戦争放棄)を規定する考えは、外国の憲法にも多数存在する。西修・駒沢大名誉教授の調査によると「世界の181の国々の現行成典憲法を調査したところ、なんと149カ国の憲法に平和主義条項が導入されている。これを1990年以降に新しく制定された82カ国の憲法に限ってみると、80カ国の憲法に平和主義条項が取り入れられている」という。

 もともと「国際紛争を解決する手段としての戦争」の否認は、1928年の不戦条約に由来する。同規定は侵略戦争を否定するものの、自衛力の行使は容認していると解釈された。この解釈は国際合意といえる。

 第9条第1項の平和主義条項は、日本国憲法の専売特許ではない。第9条は不戦条約の精神と同じであり、世界の主要な国々はほとんど同じ規定の下に拘束されているのだ。

 ところが、日本では自衛力の行使すら否定する立場の人たちもいる。平和主義憲法がすでにほぼ150カ国に達していることに鑑みれば、第9条があるからこそ日本は平和主義を主張できるという説は、全く根拠のないことであり、認識不足といわなければならない。

 第9条は、第1項の「平和主義」と、第2項の陸海空三軍の保有を禁止する「戦力の不保持」から構成されているが、「戦力の不保持」の規定は、極めて珍しいものであり、独立国家では唯一の規定なのである。

 これがいわゆる自衛隊の合憲・違憲の論争を生み、自衛権の放棄かどうかといった議論を生じさせた原因でもある。

 第2項は、国防軍の否定であり、国防の否定にもつながっている。国防の否定とは、日本が国家として存立することを禁止することと同義である。第2項がある限り、法的結社である国家(日本)も存在しないことになる。つまり国家が存在しなければ、本来ならば日本国憲法も存在しないことになるはずだ。

 また根源的には、自衛権を否定する憲法は、憲法自身を否定する権力に対して、自らを守ることを放棄していることになる。

 憲法が自らを守るのは自然権である。どのような法律によっても個人の正当防衛権を否定できないのと同様に、自衛権は憲法によっても否定できない自然権なのである。自衛権が自然権であることは、国連憲章第51条でも明確に規定されており、国際的に広く認められている。第9条もその範囲で解釈されるべきなのである。

 「一般に軍隊を持つ行政組織を国家と定義しているのであり、軍隊がなければ、定義として国家でなく、何らかの意味で植民地か保護国になる」と猪木正道・元防衛大学校校長は述べている。つまり、猪木氏は、軍隊(自衛権)を持たない国家は、独立国家ではないと言っているのだ。

自衛権認めた講和条約

 昭和27(1952)年の独立後も日本に自衛権がないと解釈するならば、旧日米安全保障条約締結後も、日本にはアメリカの主権が継続していたことになる。その意味では、旧日米安全保障条約の改定によって、日本は独立したことになるだろう。

 そして、日本はサンフランシスコ講和条約で個別的・集団的自衛権が認められた時点で、第9条を改正するべきであった。

 第2項は普段の私たちの日常生活にたとえるならば、「私は危険人物なので刃物を与えないで下さい」と自ら言っているようなものであり、独立国家としては情けないとしか言いようがない。

 安倍晋三首相は、集団的自衛権の行使が可能な国家を目指しているが、この問題もすべて第9条が障害となっている。日本が本当の意味での独立国家になるためにも、最終的には日本国憲法の改正が必要である。