難しい島言葉の普及
沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)
「ハイサイ、グスーヨー、チューウガナビラ」
沖縄県民なら恐らく誰でも知っている言葉で、「こんにちは、ご機嫌いかがですか」を意味する。9月18日は「しまくとぅば(島言葉)の日」。沖縄の方言をお祝いする日だ。これに合わせて、西原町では県文化協会主催の大会が開かれたが、方言について話題になることはほとんどなかった。冒頭のあいさつ以外、耳にしなかった。
島言葉で演説をしても若年層の有権者には理解されない。島言葉を話せる人が少なくなった危機感から2006年、県条例でこの日が定められた。県は共通語と同程度、またはそれ以上に使える人の割合を来年までに40%とする目標も掲げるが、見通しは厳しい。
県が16年度に行った調査によると、島言葉が「よくわかる」と答えたのは全体で18%にとどまる。70歳以上で71%と最も多いが、60代で43%、50代になると17%に急落する。
「ヤマト(本土)に対する劣等感はあり、頑張って標準語を話せるよう努力し、今に至っている部分がある。ただ、ウチナーグチ(沖縄方言)が分かる人がいなくなることは、文化を喪失することにつながる」
島言葉研究の権威で沖縄言語文化研究所の中松竹雄所長はこう話す。「島言葉を教え、話そうと呼び掛けても、簡単にはいかない事情がある」というのだ。沖縄本島でも首里、那覇、やんばる地方で違いがあるからだ。八重山諸島、宮古島など離島となると、さらに大きく異なり、全く別の言葉のように聞こえる。
沖縄県が島言葉で文章を作成したり、何か表記するにしても、県民全体を納得させることはできない。行政が関与するよりも、民間レベルで自然な形で普及させ、人々に親しみを持たせるのが理想的ではないか、との指摘もうなずける。
(T)