ここは妊婦優先席


地球だより

 近年ソウルで普及した地下鉄車両内の「妊婦配慮席」。以前は日本のように車両の両端に高齢者や体の不自由な人向けの「優先席」があって、そこに妊婦のマークもあった。

 ところが少子化対策として車両ごとに2座席分が別途設けられるようになった。床、座面、背もたれの3カ所がピンク色に塗られ、「ここは妊婦のための座席です。譲って下さい」「明日の主人公を迎えるシート」などと記されている。妊婦に優しい社会雰囲気づくりの一環だ。

 実際はどうかと言えば、座るか座るまいか迷う人を見掛ける一方、人目もはばからずデンと座っている人もいる。会社員やOLにとって大混雑の通勤時間帯は空いていれば座りたいのが本音。ただ、最近は「配慮」を定着させるためのキャンペーンまで実施される力の入れようだ。「ただいま妊婦配慮席に座っていらっしゃるお腹の出た男性はすぐ立って下さい」という笑うに笑えない車内アナウンスまで流れたこともあったそうな。

 もともと韓国は高齢者や妊婦に席を譲るのは当たり前。見掛けた途端、自分のすぐ前でなくてもわざわざ呼んで譲る人も多かった。昔は席を譲るだけでなく、カバンを持ってあげる習慣まであった。記者が韓国に赴任したての頃、バスで若い女性の目の前に立っていると、女性がいきなり記者のカバンを自分の膝に置くのでビックリしたことがある。まだ何も知らなかった頃で「ひょっとして気があるのかな」と勝手に勘違いしたものだ。

(U)