聖火「宿泊地」の誇り


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 2020年東京五輪の聖火リレーの日程が決まった。沖縄は5月2日~3日に実施される。この東京五輪は、沖縄県が日本国の一員として迎える初めての国内夏季五輪となる。

 そのため県は、沖縄からスタートしてほしいと要望していたが、「復興五輪」という位置付けから、出発地点は東日本大震災で被災した福島に決まった。沖縄からスタートしないことで、県庁では残念がる声も聞かれたが、福島発とした大会組織委員会の判断は妥当だとして大半の県民は歓迎している。

 前回1964年の東京五輪は、日本の戦後復興の象徴とされているが、沖縄は当時、米軍占領下にあった。それでも、聖火リレーは沖縄からスタートし、大歓迎された。当時の組織委員会事務総長は「沖縄は日本の国土であるから、聖火の日本最初の上陸地点である」と発言。「沖縄があたかも日本に『復帰』したかのような喜びにわきかえった」と地元紙で報道されている。

 聖火リレーは、那覇から大宜味村まで東海岸を北上し、西海岸を回って那覇に戻るというルート。沿道が日の丸で埋め尽くされる中、151人が聖火リレーに参加した。

 1日目の終点は名護市嘉陽。この種火の「宿泊地」には今も聖火台が残る。高さ約90㌢の台座、約130㌢の円柱の上に、直径約1㍍の大型鍋の点火台で構成されている。見た目は当時と変わらないが、セメントに亀裂が生じるなど老朽化したため、名護市久志支部体育協会の役員らが補修。さらに、地元中学生らがペンキを塗り直した。

 翌年の1965年には「聖火宿泊碑」と書かれた聖火モニュメントが完成。隠れた観光名所となっている。また、「聖火宿泊記念久志20㌔ロードレース」は今年9月で52回目を迎える。聖火宿泊は地元の誇りなのだ。

(T)