前途多難な農連再開発


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 農連市場などが入る施設が10月17日、那覇市樋川に完成した。農連市場は、1953年の開設以来、生鮮野菜類を中心にした「食の台所」として繁栄したが、建物の老朽化や防災設備が十分でないことや商売が時代のニーズに合わないことを理由に再開発されることになった。

 1階には野菜や精肉、飲食店、2階には仲卸業者や飲食店の合計120店舗分のスペースがある。3階には96台分の来客用駐車場が整備されている。しかし、城間幹子市長ら関係者らによるテープカットでグランドオープンした11月1日から15日が過ぎた現在でも、2階部分は工事中でほとんどが未開業だ。

 このため、10月末には完全閉鎖されるはずだった農連市場の精肉店など一部の店舗はそのまま営業を続けている。ある店主は、「新店舗の設備が整わないからやむを得ず営業しているが、閉鎖したと思ってお客さんはあまり来ない」と不満を口にした。

 最高齢の店子(たなこ)である新垣キクさん(90)は移転をきっかけに商売をやめようと思ったが、周りの仲間に励まされ、新店舗で仕事を続ける決意をした。引っ越し代という名目の保証金を受け取ったものの、「不十分」だと言う。新垣さんの1カ月のテナント料は約3万5千円で以前の2倍。駐車場代は1万5千円だ。

 移転をきっかけに商売をやめた店子は約3分の1に上る。新店舗のテナント契約は1年単位。「農連市場は郊外型スーパーやJA産直市場に押され気味でどこも経営が厳しい。採算が合わず、1年後には生鮮野菜の店子の多くはやめてしまう」という。

 なお、農連市場の跡地には、2020年までに4階建ての駐車場などが完成する予定。店子と親しい上原正稔氏(74)は、「権利者は農連市場組合。勝手に駐車場を作らせる訳にはいかない」と主張している。

(T)