日野原氏から学ぶ健康長寿
沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)
聖路加国際病院名誉院長で医師の日野原重明氏が105年の生涯を閉じた。
生涯現役で、100歳を超えても患者を診察する姿は多くの国民の目に焼き付けられたに違いない。一昨年には沖縄で講演会をした。「長寿県沖縄」の崩壊に危機感を示しながら生活習慣の改善を訴えた。
1970年には、日本内科学会の総会に出席するため福岡県へ向かう際に、赤軍派による、よど号ハイジャック事件に遭遇し、韓国ソウルの金浦空港で人質となった。講演では、解放され空港に降り立ち、「与えられたこれからの人生を人のために捧(ささ)げようと決心した」と述べたのが印象的だった。
早くから予防医学に取り組み、生活習慣病にいち早く警鐘を鳴らした日野原氏は、従来の医療概念を改革した。「成人病という名前はおかしい。これは過度の酒やたばこ、乱れた食生活など、悪い生活習慣の蓄積からなる病気なので『生活習慣病』と言うべきだ」と関係機関を説得し、「生活習慣病」の呼び名を定着させた。
健康長寿県として知られていた沖縄県の健康危機について、日野原氏は早くから問題に気付いていた一人だ。
東京大学大学院の国際保健政策学教室が米ワシントン大の保健指標・保健評価研究所と共同で実施した研究によると、2005年時点で、日本人は健康上の問題がなく生活できる健康寿命が伸びたが、沖縄県は全国平均を大きく下回った。健康で過ごす期間を示す健康寿命は青森県に次ぐ全国ワースト2だ。要因は確定的ではないが、肥満、飲酒、運動不足が不健康につながっていることは間違いない。
日野原氏の生き方を見習いながら健康長寿を取り戻すことが、沖縄県にも必要ではないだろうか。
(T)