中国にNOと言えぬ「ダライ・ラマ訪問」


地球だより

 先週、ソウルの劇場で世界的な仏教指導者、ダライ・ラマ14世のドキュメンタリー映画「おお!ダラムサラ」が3日間限定で無料上映された。チベットの聖地で行われた法会での取材を基に訪韓推進委員会も関わって制作されたもので、地方の主要都市での上映も決まっている。ところが在韓中国大使館が「宗教色の濃い映画の無料上映は不適切」として劇場に上映中断を要求していたことが分かり、物議を醸している。

 周知のごとくダライ・ラマ14世はチベット亡命政府のリーダーとして非暴力による解放や文化遺産保存を訴え、1989年にノーベル平和賞を受賞している。同年の天安門事件で脚光を浴び、後に同じ平和賞を受賞、先日他界した劉暁波氏と同じように中国政府にとっては人権や民主化などの問題をめぐり対立してきた“厄介者”だ。たとえ映画でも体制批判のシンボルに関する動きには過剰ともいえるほど神経を尖(とが)らす。

 韓国はこれまで何度もダライ・ラマ14世を招請したが、実現していない。そのほとんどは中国政府の圧力か中国の顔色をうかがう韓国政府の「入国不許可」方針が原因だ。中韓両国は北朝鮮弾道ミサイルを迎撃する米国製高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備でひと悶着あったばかり。中国の露骨な内政干渉にはハッキリと「NO」と言ってほしいものだが、米中間のバランサー外交を目指す今の韓国には無理な話か…。

(U)