那覇の御成橋が消滅危機に?


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 那覇市の沖縄県庁近くに御成橋がある。昭和天皇が皇太子時代、沖縄を訪問された時に渡られたことにちなんで命名された。欄干には、那覇市の首里城正殿や那覇大綱挽(ひ)きの旗頭のデザインが施されている。

 那覇市に御成橋を改修させる動きがある。その際、欄干に数㍍の龍柱を立て、改修後は改名される可能性があるという。沖縄県神社庁参事の大山晋吾氏(波上宮禰宜)が23日、沖縄県護国神社で開かれた「天皇誕生日を祝う県民の集い」で明らかにした。

 御成橋の上にはモノレールの県庁前駅がある。隣接駅の旭橋、美栄橋からしても、「御成橋駅」とするのが妥当なはずだ。また、最寄りのバス停の名前はもともと、御成橋だったが、後に改名された。

 那覇市にはここ数年、急激に龍を施したオブジェが増えた。国際通りの爬竜船、那覇市ぶんかテンブス館の大スクリーン両脇にある龍の柱などがそうだ。

 極め付けは、若狭海浜公園に建設される巨大な龍柱だ。全長15㍍、総重量450㌧で2本ある。

 若狭は本来、日本人町であり波上宮のお膝元だ。しかも、市が指定する災害時一時避難所に倒壊の危険すらある柱を立てること自体が非常識だ。大山氏によると、江戸時代には首里城の約3㍍の龍柱でさえ倒壊したという。

 天皇誕生日もかつては、「天長節」と呼ばれ、新年、紀元節、明治節とともに「四大節」の一つに数えられていたが、昭和23年に「国民の祝日に関する法律」により改正された。国民・県民の記憶や意識の中から伝統的なもの、皇室に関するものが少しずつ消されていることに危機感を抱かざるを得ない。(T)