沖縄観光に打撃を与えた「9・11」から20年
沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)
2001年9月11日、米国ニューヨークとワシントンを襲った米同時多発テロ(以下、9・11)から20年になった。
事故直後、在日米軍の基地・施設が多い沖縄への旅行に不安が広がり、修学旅行を中心にキャンセルが相次いだ。9・11翌日、文部科学省が各都道府県教育委員会に、海外修学旅行に関する注意喚起の文書を送った際、東京など一部の教育委員会が、「旅行中は米軍基地および施設などに近寄らない。特に韓国、沖縄に修学旅行を予定している学校は、格段の注意を」と、沖縄を名指しした注意喚起文書を発送した。このことが影響し、沖縄観光は危機的状況に陥った。
当時の稲嶺恵一知事は、修学旅行の実施を全国的に呼び掛けたほか、国に対しても予算や対策を依頼。合計7億円の予算を計上して「だいじょうぶさぁ~沖縄」キャンペーンを実施した。
9・11が起きる前、沖縄は空前の観光ブームに沸いていた。2000年に沖縄サミットが開かれ、国際的に知名度が高まった。その上、01年4月から放映されたNHK連続テレビ小説「ちゅらさん」や安室奈美恵を代表とする沖縄出身アーティストの活躍が人気を後押しした。それだけに、ブームに水を差す形となったことは残念だ。
玉城デニー知事は10日の記者会見で、「9・11テロ事件は米軍基地が多く存在する沖縄に不確実な状況を生み、観光発展に影響した」と指摘した上で、「テロは断固として非難されるべきで、国際社会は団結して立ち向かうべきだ」と訴えた。
9・11による観光収入の減少は前年度比で1割程度にとどまったのに比べ、昨年からのコロナ禍の影響は比較にならないほど大きい。今こそ、ウィズコロナとポストコロナの観光の在り方を見据えて知恵を出す時だ。
(T)