研究するほど奥深い「古酒」の独特の香りに注目


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 9月4日は「古酒の日」。

 沖縄の酒といえば泡盛だが、泡盛を3年以上貯蔵したものを古酒という。沖縄の方言でクースーと呼ばれ、語呂合わせに由来する日だ。県の酒造組合は例年、この日に泡盛の愛好家や酒造業の関係者を集めて、飲み比べなどのイベントを行うが、コロナ禍の下で昨年と今年は自粛を余儀なくされている。

 ただ、家飲み、ひとり飲みで泡盛が好まれているかといえば、そうでもなさそうだ。

 泡盛の消費量は減少傾向が顕著だ。酒類の消費者ニーズの多様化などが影響し、2004年をピークに泡盛の出荷量は減少傾向に歯止めがかからない。宴会でお酒を飲まない人が市民権を得られるようになったことも影響しているのだろう。

 泡盛の起源は古い。シャム国(現在のタイ)から14~15世紀ごろに蒸留技術が伝わり、タイ米と甕(かめ)の黒麹菌が組み合わさったことにより、沖縄で泡盛が誕生したといわれている。

 地元では「島酒」として親しまれ、観光客を楽しませる食文化の資源ともなっている。

 泡盛は、ワインやブランデーなどと違い、含まれる成分そのものが長期熟成することによって、物理的・科学的に変化して香味成分が加わっていく。沖縄国税事務所が3日公表した泡盛古酒の分析結果によると、古酒にはドライフルーツの香りも醸し出されることが分かった。

 従来、代表的な古酒香として、カラメルや蜂蜜の香りが知られているが、今回の研究で、レーズンなどのドライフルーツの香りも強い特徴として確認された。同事務所の担当者は、「泡盛の古酒は研究すればするほど奥深く、世界を代表する蒸留酒だ」と話し、その価値が世界の人々に理解されることへの期待を示した。

(T)