西武の平良海馬投手、困難を乗り越え頂点に
沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)
前回に引き続きプロ野球の話題になるが、沖縄出身のプロ野球選手が大記録を打ち立てたので、どうしてもここで触れておきたい。西武ライオンズの平良(たいら)海馬(かいま)投手が2日、39試合連続無失点の金字塔を打ち立てた。
まだプロ4年目、21歳と若い。昨年は54試合に登板して33ホールド、防御率1・87と安定した成績を残し、パ・リーグ新人王に輝いた。今年はそれをはるかに上回る成績を残している。東京五輪の代表にも選ばれ、侍ジャパンの抑えのエースとして活躍が期待される。
平良投手は沖縄県石垣市出身。2018年、ドラフト4位で高卒投手として西武に入団した。高校時代は部員がたった7人で試合に出られず、宮古島の高校と連合チームを組まざるを得なかった時期もあった。3年生では県大会で1勝も挙げられなかった。甲子園の経験はない。
それでも、彼の投球はスカウトの目に留まった。抑えのエースの怪我(けが)の影響もあり、中継ぎから守護神へと成長した。四死球や単打で走者を許すことはあっても、絶対に得点は許さない。強い気持ちが大きな力となっている。
ひと昔前は、「本土に追い付け、追い越せ」というのが合言葉のようになっていた。平良投手の活躍は、県民の気持ちを背負ってボクシングの世界チャンピオンになった具志堅用高さんを想起させる。奇しくも石垣島出身ということで共通している。
沖縄出身のスポーツ選手の活躍を日本本土に対するコンプレックス(劣等感)、さらには石垣島の沖縄本島に対するコンプレックス払拭に重ね合わせる人が多い。ただ、こうしたコンプレックスとは無縁の当の本人には、そういった感情は微塵(みじん)もないことだろう。
(T)