極端な選択が減らないワケ 韓国から


地球だより

 オンラインゲーム漬けの毎日を過ごし、友達と遊び回って家に何日も戻らない兄とは違い、勉強ができる妹は両親の期待を一身に背負っていた。ところが、学校の先生からも太鼓判を押されていた難関大学受験に失敗。妹は不合格通知があった日の夜、自ら命を絶った。周囲の期待は本人にとって逃げ場のない重圧だった。葬儀では放心状態となった母親の姿が参列者の胸を締め付けた。これは昨年、ソウルのある家庭で実際にあった話だ。

 自殺と言えば韓国では近年、ショッキングな出来事も続いた。巨額収賄疑惑で捜査対象となった退任後の前大統領が投身自殺したり、現職の市長がセクハラの加害容疑が掛けられると間もなく山林で首を吊った。人気に陰りが出た芸能人の自殺も多い。「社会に影響力を持つ人がなぜ」と思わずにはいられないが、もっと驚かされたのは多くの韓国人が「自分も同じ立場だったら同じ選択をしたと思う」と真顔で言うことだった。

 このほど当局が発表した一昨年の自殺者数は1万人を超え、人口10万人当たり27人でOECD(経済協力開発機構)加盟国平均の実に2倍だった。そこに至る事情はさまざまだが、自分に期待する周囲の目を気にし過ぎたり、築き上げた自分のイメージが崩れることに耐えられないメンタル面の危さが災いしたのではないか。トップばかりを目指す過度な競争社会であるからこそ「もっと肩の力を抜いて!」と声を大にして言いたい。

(U)