自・公機関紙に日中与党交流 日中「一帯一路」協力は要注意
日本経済を組み込む中国
10月9~12日に行われた第8回日中与党交流協議会を、自民党機関紙「自由民主」(10・23)、公明党機関紙「公明新聞」(10・11~13)が取り上げた。同協議会は、自民・公明と中国共産党との定期交流の枠組みだ。2009年の政権交代で一時中断した後、尖閣問題で両国関係が悪化した中、15年から再開した。
露骨な対日批判、公船による尖閣諸島周辺への領海侵犯、東シナ海ガス田開発など、中国には「友好」と程遠い実態があるものの、公明新聞を見ると公明党の母体の宗教的動機がにじんでいる。
「基調講演で井上副代表は、日中関係について、公明党創立者である池田大作・創価学会名誉会長の日中国交正常化提言の発表から50周年、日中平和友好条約締結から40周年の節目に当たり、今年9月に山口那津男代表が訪中したことに言及」(10・11)
「山口代表は、今年が公明党創立者の池田大作・創価学会名誉会長による日中国交正常化提言の発表から50周年、日中平和友好条約の締結から40周年の節目であることを踏まえ、『…与党としても両国関係を支え、さらに発展させていく…』と力説した」(10・12)
自民党の場合は応援団の経済界の意向が強い。日本の世界に対する貿易において中国は貿易総額が07年以来1位であり、17年は6年ぶりに日本の黒字になっている。一方、中国共産党にとっては、習近平党中央委員会総書記(国家主席)が進める巨大経済圏「一帯一路」構想への日本経済組み込みだ。
「自由民主」に掲載された「日中与党交流協議会第8回会議共同声明」では、「双方は日中『一帯一路』協力の国際的なモデル地区をテーマとする実務者懇談会を共同で開催し、日本の経済界の代表は『一帯一路』の提唱の下で、協力プロジェクトにつき検討を加え、福建省との経済貿易協力をより一層強化することを表明した。両国与党は実際的な態度で開拓する精神の下、互恵協力を深化させるため、『一帯一路』協力の国際的なモデル区が早期に実質的成果を上げられるよう共に推し進める努力をする」としている。
今や世界第2の経済大国・中国が福建省で日本に協力を請う時代ではない。このところ中国の巨額融資によるインフラ整備は途上国に債務問題を引き起こしている。借金を返済できずハンバントタ港の運営権を中国に差し押さえられたスリランカ、高速新幹線計画の中止を決めたマレーシア。パキスタンは鉄道建設計画を縮小した。
しかし、日中となればイメージも変わる。欲しいのは「日中『一帯一路』協力」の標語であり制度化だろう。文言上は既に日本を巻き込んでいる。
また、「双方は、日中両国が手を携えてアジア及び世界その他の地域の旺盛なインフラ需要に積極的に応え協力していくことは国際社会の期待であるという認識を共有した」という。
「債務の罠」の批判を受ける「一帯一路」プロジェクトだが、安倍政権の「地球を俯瞰する外交」を逆手に取り、円の援助を債務返済の肩代わりにさせるつもりだろうか。また、日本は人手不足。途上国の現場では中国人労働者が目立ち、日中で開発をしたとしても存在感を示すのは中国だ。
ペンス米副大統領は、中国が米国の投資によって経済成長しながら、いかに数々の不正により脅威となったか指摘し、歴代米政権の対中政策は失敗だったとハドソン研究所で説いた。70年代に「日中友好」の旗を振った日本も既に「脅威」に転じた中国を経験済みだ。日中「一帯一路」協力は要注意である。
編集委員 窪田 伸雄