海洋基本計画の「公明」特集 状況把握能力強化を評価

事業・施策で中国に対抗

 公明党の機関誌「公明」8月号は、「豊かで平和な海洋環境の創造」と題して第3期海洋基本計画を特集した。同計画は、外国(中国)の各種艦船による海洋進出、北朝鮮ミサイル発射の脅威を明記し、領海警備や離島防衛など安全保障政策を柱に据えて5月に閣議決定された。

 巻頭対談で日本海洋政策学会会長の奥脇直也氏は 冒頭、「同計画の特徴の一つとして、防衛・海上保安体制の強化を進めるための『海洋状況把握』(MDA)の能力強化が、項目として独立したことは評価できます。MDAとは、海洋関連のさまざまな情報を艦艇や巡視船艇、航空機、衛星、調査観測船などから効果的に収集、集約共有して、日本の防衛・海上保安の能力を高めることです」など安全保障について触れた。

 また、わが国の排他的経済水域(EEZ)には豊富な資源があるが、中国の海底資源開発に対抗するため「大規模な洋上風力発電の導入やメタンハイドレートと呼ばれる鉱物資源の開発も、基本計画に沿いながら、国際社会の理解を得つつ本格的な事業化を急ぐべきです」(同)などと訴えた。

 特集の比重を占めるのは後者で、離島への自衛隊配備や海上保安庁による尖閣諸島への警備強化についての論文は載っていない。

 資源開発について、東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター長の加藤泰造氏は「南鳥島レアアース泥の開発で経済成長を加速」との記事で、南鳥島のEEZにレアアース(希土類元素)が最有望海域105平方キロメートルに120万トン存在することを同氏らが4月に発表したことを踏まえ、将来、中国に依存しているレアアースを国内産に切り替え、年間10兆円規模の産業にする可能性を展望した。

 上智大学法学部教授・兼原敦子氏による「第三期海洋基本計画が描く安全保障の姿」との記事では、防衛だけでなく「多様な施策が『総合的な海洋の安全保障』の一環をなすことが理解されなければならない」ことを強調。

 穏健中道を標榜(ひょうぼう)する公明党らしい切り口だが、有望なわが国の広い海の活用を期待したい。

編集委員 窪田 伸雄