敗退語らぬ「民進」 共産との共闘依存深まる

突破された「改憲3分の2」

 今回の参院選で対決軸となった自民・公明の与党と民進・共産の野党の4党のうち、民進党だけ敗北した。改選45議席から32議席と13議席減らしたが、機関紙「民進プレス」(7・15)は敗退を語らず、負けた雰囲気のない紙面だった。

 1面見出しは「岡田代表『新しい民主主義が始まった』/統一候補、東北5県を制すなど健闘」「この流れを止めることなく/さらに力強く進める」。同面に載る「参議院選挙結果を受けて」という10日深夜の党声明は、初めから「改選前議席を減らしたものの、前回参院選からはほぼ倍増する結果となりました」と書き出している。2013年参院選の17議席と比較して一安心というところだ。

 無論、「結果を厳粛に受け止め、党勢回復に向けていっそうの努力」を誓うが、もう一つ楽観的な理由は、「今回の選挙では市民が中心となり、これに賛同する政党が集まるという新しい民主主義の形が始まった」と捉えているからだ。

 見出しの「東北5県」だが、共産党候補が立候補しても当選した可能性があるのは岩手、山形の無所属だけだ。それだけ共産党が公認を取り下げる野党共闘はありがたいのだろう。水と油の政策の共産党と共闘を組むため「市民団体」を媒介として、党を隠した「市民」が選挙運動を担うスタイルに期待を掛けている。

 しかし、どのような市民が中心となって、賛同する各党を集めたかといえば、安保関連法廃止を求める「市民連合」であり、昨年の安保法制反対デモに参加した「総がかり実行委員会」「シールズ」だ。憲法9条改正阻止、集団的自衛権の行使を一部可能にする憲法解釈をした閣議決定の撤回を求めて、共産党が提案した「国民連合政府」構想と軌を一にした運動体だ。

 このような「市民連合」の支持を得るため民進党の岡田克也代表は、今回の参院選の目標を憲法改正勢力が参院で3分の2を占めることを阻止することを掲げ、選挙ポスターまで用意した。これを阻めなかったことについて「民進」は3面に、「残念ながら3分の2を許してしまった。しかし安倍総理は争点から逃げた。」という岡田代表の記者会見のままの見出しを立てた。が、13議席減らし、「3分の2阻止」の勝敗ラインも割ったのだから、普通なら党首の進退問題が起きる。

 維新の党との合併と党名変更も、「1+1」が「2」ではなくそれ以下だった。14年衆院選比例代表得票から、分裂する前の維新の党の票を半分にして民主党に加えれば1396万7340票、得票率26・19%となる。これに及ばず、今回の民進党の比例票は1175万983票、得票率は21・0%。共産党との共闘を嫌った層がいると考えられる。

 この状況で「この流れを止めることなく、さらに力強く進める」なら、民進党は議員個々の考えと関係なく共産党に近い左翼政党の立ち位置をとらないと当選者を出せなくなるだろう。

解説室長 窪田 伸雄