「赤旗」に民主系候補、統一候補担ぎ自共対決

「受け皿」消滅と見て共闘

 共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は「野党共闘」のオンパレードになっている。紙面にこの見出しが載らない日はない。安保法を「戦争法」と呼び廃止を求める街頭行動はじめ、最近では民主党候補を応援する野党共闘記事を積極的に掲載している。

 13日付1面には「衆院北海道5区補選/統一候補・池田氏訴え」(見出し)の記事・写真、14日付1面にも同補選記事・写真と「宮城参院選挙区/野党統一候補必勝を」(見出し)の記事・写真で「参院選挙区野党統一候補・桜井充氏(民主現職)」への支持を訴えている。

 同候補者の所属政党の機関紙より「赤旗」は部数が多く、発行間隔も日刊および週刊なので共産党機関紙上での登場頻度が多くなろう。15日付には「参院予算委/給付奨学金創設を/民主党の桜井議員」の見出しを打ち、桜井氏の国会活動を紹介するサービスぶりだ。

 かつて共産党は東京都知事選(1967年)で社会党系の美濃部亮吉氏を革新統一候補として担ぎ、美濃部都政が実現すると全国の首長選で革新統一候補方式の流れを作った。70年代前半に国政選挙で共産党が躍進すると「民主連合政府」を展望した。

 綱領路線でこのパターンが繰り返されるが、社会党は20年前に社民党となり著しく衰退した。代わりの相手は「従来の保守の流れも含む修正資本主義の潮流であることも、大いにありうることである」(第26回党大会決議、2014年1月)として探していた。出会ったのが、以前は機関紙・誌で「甲斐性なし」とこきおろしていた民主党であり、「政党助成金目当て」と批判していた新党にあたる維新の党や生活の党だ。

 共産党は12年末総選挙と13年夏の参院選での民主党大惨敗に、「自民党と共産党との間の『受け皿政党』が消滅した」(同決議)と見て自共対決を主張。今の野党共闘はその一環だ。

 目的は、目指す共産主義のステージに至るため現在の制度内で「二つの異常」と呼ぶ「財界中心」「対米従属」の批判により、財界と米国に敵対させることだ。日米同盟を後退させ、経営側に厳しい政策をとる。故に日米同盟を強化した安保法に反対し、産業界からの支持が多い自民党に反対するのであれば、現段階では「保守の流れ」もよしとする。共闘したら、デモや世論戦に巻き込みながら少しずつ改造していく自信があるのだろう。

 問題は、「保守の流れ」がある他の野党から拒絶されることだったが、昨年来の安保法制デモで「甲斐性なし」と見下していた他野党に歓声を送り、選挙協力で票を差し出す用意を示したことで政党間協議にこぎつけている。安保法廃止法案共同提出の際に取り交わした5野党合意は、国政選挙協力、連立与党、政府樹立のプロセスを経なければ実現できない。

 逆に言えば自民・公明の政権が続く限り有効だ。民主・維新が作る民進党と共産党の民共野党共闘の実験に有権者はどう反応するだろうか。

 解説室長 窪田 伸雄