人口減少と「公明」、社会保障に厳しい判断
子の数に「職場風土」指摘
公明党の機関誌「公明」6月号は「人口減少社会の明日を考える」との特集を組んだ。明治大学教授・加藤久和氏は「経済成長と整合的な社会保障制度の構築を」と題する巻頭記事で「もはや人口減少のトレンドを止めることは難しい」と、人口減少を避けられない現実と受けとめる。
加藤氏は、「2012年の国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、およそ35年後の2048年に1億人を割り込み、2060年には8674万人になるとされる」と指摘し、扶養率(1人の65歳以上人口を支える20~64歳人口の数)も2060年には「1・2人にまで減少する」という下降線を辿(たど)ることから、いずれ社会保障制度の「選択と集中」が迫られることになり、「ターゲッティング」と名付けた「真に必要な人に必要な給付を行う」改革を呼び掛けている。
具体的には「基礎年金の財源を確保するため消費税ですべてをまかなう」「世界で最も長寿の国であるわが国の年金支給開始年齢が65歳であること自体、まずは再考すべきものと考える」と訴えるなど、年金支給開始年齢の引き上げ、医療・介護での「保険の対象者の選択」、生活保護の「効率的な見直し」などを提案したものだ。
今後、消費税も人口減少で消費が縮小し税収が落ち込めばさらなる税率引き上げが考えられる。「選択と集中」とは優先順位の低いものからカットすることだが、野党のライバル政党から「大増税」「福祉切り捨て」などと付け込まれる様子が見えるようだ。
しかし、公明党の結党50周年の企画を連載し、大衆の党、福祉の党をアピールしてきた同誌だけに、かえって人口減少の数値の前にはどうすることもできない極めて深刻な日本の将来像が浮かび上がる。社会保障制度をめぐっては民主党も政権を獲得したら公約を翻して消費増税に踏み切った。予算編成する政府与党となれば数字の前に厳しい判断を迫られる。
人口減少に向かう推計は悲観的なものだが、女性政策も人口減少による労働人口減少を食い止める経済中心の政策論議の中で注目されており、「産む」より「働く」が主眼になって企業内制度の充実が語られることが多い。
ただ、同誌で「女性の活躍が日本発展促す」を書いた東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長の渥美由喜氏の記事では、「大企業であっても、女性社員の企業子宝率の調査結果は0・5(2人に1人しか産んでおらず、しかも一人っ子)であった。大企業では制度はあっても使いにくい職場風土があるので、結果的に産むのを諦めている女性社員が少なからずいるのである。企業子宝率は、まさに、『職場風土』を反映するものである。実は、中小企業の方が、企業子宝率は高い。中小企業は大企業に比べると制度は整っていないが、柔軟に対応してうまくやっているところが多い……」と述べている。
パラドクシカルな指摘だが、お堅い企業制度よりも柔軟で理解のある人間関係の有無が仕事と家庭のバランスを女性社員が取る上で肝要ということであろう。