病院再編と社・共誌 コロナ事態で反対に追い風
虚を突かれた厚労省の計画
新型コロナウイルスの感染拡大で攻守逆転の様相となったのが、厚生労働省の公立病院統廃合計画だ。昨年9月、「過剰な病床数」「医療費圧迫」などを理由に424の病院名を公表し、各都道府県の取り組みを今年9月までにまとめるよう指示していた。しかし、コロナ感染で都市部で医療崩壊に直面する事態となり、野党の反対論に追い風が吹いている。
社民党機関誌「社会民主」4月号は、「新型コロナウイルス対策でも明らかになった安倍政権の悪政」と題する甲府市議会議員・山田厚氏(一般社団法人全国労働安全衛生研究会代表)の記事を載せ、「感染症・伝染病に対する公的防疫体制自体が壊されてきた」と批判。
「(424病院のうち)48病院が感染症指定医療機関であり、その感染症病床は結核病床を合わせると682病床にもなる。この重要な機能を持つ公立病院を統廃合・機能縮小させる計画だから極めて悪質である」と、鬼の首を取ったように罵(ののし)った。
さらに、「1991年には852あった保健所は、2019年までに472に削減」「全国的に公衆衛生医師の不足が深刻」「都道府県保健所には本来、感染症患者移送専用車が配備されているべきだ。しかし保健所機能の低下に伴い、この専用車がなくなってきている。山梨県にはわずか1台しかない」「96年には9716床あった感染症病床は、19年までには1758床にされた」など数字を並べた。
また、共産党機関誌「前衛」5月号も「公立・公的病院再編統合問題と地域医療」の特集を組み、医労連、全医労などの政治的な撤回運動の流れに新型コロナ感染を落とし込んで批判している。
戦後、戦地からの復員に伴い流行したコレラなどの伝染病はめっきり減り、わが国では重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の感染も広がらなかった。この流れで採算性重視の病院再編が進みつつあったが、平時の議論を度外視せざるを得ない新型コロナの緊急事態で完全に虚を突かれた形である。
編集委員 窪田 伸雄