日本独自の「女性活躍」を、「ジェンダー平等」

 「森発言」をきっかけに、「ジェンダー平等」が注目を集めている。森氏の後任として新会長に就任した橋本聖子氏は就任会見で、今後の重点政策の一つに「ジェンダー平等の推進」を挙げ、早速推進チームを発足させた。

 こうした動きを予想したわけではないだろうが、月刊「潮」は2、3月号と連続で「女性活躍」に関する論考を掲載した。東洋大学理工学部准教授の小島貴子氏の論考「あなたの中にもある『無自覚な偏見』から自由になるために。」と、近畿大学教授の奥田祥子氏の「なぜ日本では『女性活躍』が進まないのか。」だ。

 森発言はジェンダー平等の後進性、男女の役割に関する偏見の象徴というのがほとんどのメディアの評価だった。小島、奥田両氏とも、日本の後進性を表す指標として紹介しているのが世界経済フォーラムが2019年末に公表した「ジェンダー・ギャップ指数2020」。日本は153カ国中121位。

 女性活躍が進んでいないという点では、両氏の立場は同じだが、管理職などに占める女性の割合を法律で定める「クオータ制」について、小島氏は「強制的にでも女性の政治家、管理職を増やしていかない限り、状況が変わることはない」とした。一方、奥田氏は「クオータ制自体は、うまく機能すれば有効な仕組みだ」としながらも「今の日本企業の現状にどうしてもそぐわないのなら、もう少し柔軟な対応を考えてもよいのではないでしょうか」と、柔軟な対応の必要性を強調する。

 また、女性活躍というと、政治・経済分野における女性の活躍に重点が置かれる傾向にあるが、奥田氏は専業主婦も「立派に活躍している姿」であり、「そのような女性もきちんと評価すべきです」と、女性活躍にはさまざまな形があることを指摘。女性のキャリア志向ばかりに焦点を合わせる風潮に一線を画すほか、「過剰な女性優遇が男性差別になってしまってはいけません」とバランスの取れた主張を行っている。

 「ジェンダー・ギャップ指数」を杓子(しゃくし)定規に適用すると、家庭を守ることにやりがいを感じる女性の意識や日本文化の否定につながる懸念がある。ジェンダー・ギャップ指数をあまり気にし過ぎずに、男性の役割、そして家庭と仕事との調和を大切にする日本独自の「女性活躍」の姿を模索すべきだろう。

 編集委員 森田 清策