米国の人権専門家らに被害訴え


“拉致監禁”の連鎖(244)パート10
被害者の体験と目撃現場(30)
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来日した米国下院議員が強制棄教問題について当局の見解をただすため訪ねた法務省の建物(東京・霞が関)

 舞さんは2012(平成24)年から、拉致監禁根絶のための活動に力を入れ、海外の政府関係者や人権専門家らに自身の体験を明かし、被害を訴えるようになった。

 同年4月には、拉致監禁の事実調査のため来日した米国下院議員に面会。「私は愚かもののばか」と書かれた母親の聖書を見せながら、「私は第一の被害者だけど、親も第二の被害者だ」と語った。

 米国議員は、その後、日本の複数の国会議員と直接会い、信者の強制脱会の実情に対する認識をどれほど持っているのかを尋ねるなど、高い関心を示した。

 さらに、法務省人権擁護局も訪ねた。対応した同局の担当者は「日本においては宗教の自由は完全に守られている」「(強制棄教による)人権問題は存在しない」などと、十分な調査もなしに答えた。同席していた舞さんは、その姿勢に納得できず、自身の被害や思いの丈をぶつけた。

 被害者を目の前にして「人権問題はない」と簡単にあしらう役人の姿は、米国議員の目にどのように映っただろうか。

 米国議員は国務省による公式日程で来日しており、帰国後、ワシントンで国務省の国際宗教自由事務局の担当者に調査旅行の報告を行った。

 5月8日に開かれたこの報告会には、同局の事務方トップ、ビクトリア・アルバラード氏、東アジア人権担当のクレア・デービスロング氏ら4人が参加。舞さんや在米の拉致被害者もその場に呼ばれ、体験を語った。

 訪日調査した米国議員は「日本の文化伝統では、この(拉致監禁)問題は家族の問題であるとみなされる傾向がある」としたものの、「日本の国会議員は懸念を示している」と報告。さらに米国が「宗教の自由」を守るために動くよう求めた。

 舞さんは、国務省関係者を前に被害の苦しみを訴えた。暴力があったことや婚姻無効裁判を強いられた話になると、アルバラード氏は目に涙を浮かべ聞き入った。

 在米の日本人被害者は「米国人と結婚して米国に在住している日本人の被害者もいて、後遺症に苦しんでいる。それが家族に影響を与えている」と述べ、日本だけの問題ではないと訴えた。

 アルバラード氏は「世界各地における宗教の自由を守る上で、米国の役割は重要だ」と強調。最後に舞さんが「私たちはあなたの助けが必要だ」と訴えると、アルバラード氏が舞さんをいたわるように抱きしめた。

 翌日、今度は国際宗教自由担当大使のスーザン・クック氏が舞さんに会いたいと連絡してきた。それで舞さんは、同10日、国務省にクック氏を訪ねた。舞さんの話を聞き終わると、クック氏は「国境なき人権のように、ほかの宗教団体やNGOの中にもこの問題を訴えるところが出てきてほしい」とし、被害をなくすのに協力を惜しまないと約束した。

(「宗教の自由」取材班)