脱会屋・宮村峻氏に賠償命令


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後藤徹さん勝訴から(中)

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勝訴の判決を受けたあと記者会見する後藤徹さん(中央)= 28日午後、東京・霞が関の司法記者クラブで

 相澤哲裁判長が主文を「1」に続けて読み上げる。「2、被告宮村峻は、原告に対し、被告後藤隆、被告後藤洋子及び被告青栁雅子と連帯して96万7822円(…その手続き云々)を支払え」という箇所も、早口だったがはっきりと聞き取れた。

 宮村峻氏は「拉致監禁の親玉であり、これまで1000人の信者を強制説得してきた」(著書『我らの不快な隣人』で拉致監禁の深刻な被害者の実態を伝えたルポライター・米本和広氏のブログから)人物、いわゆる「脱会屋」だが、これまでのこの種の訴訟ケースでは、家族らに賠償などを認めたことはあっても、宮村氏の責任を問われたことはなかった。

 しかし判決文では、宮村氏の不法行為への加担とその責任を明確に次のように認めた。「被告宮村は、信者に対する脱会説得につき多くの経験を有し、その経験に基づき、水茎会などの場において、信者の家族らに対し、脱会説得の実践的・実効的な方法を指導していたところ、被告隆らは、水茎会に通い、宮村の下でその方法を学び、原告を荻窪フラワーホームに移動させた後も、その方法に則って原告に対する脱会説得の試みを続け、被告宮村も、原告が荻窪フラワーホームにおいて不当に心身を拘束されていることを認識しつつ、平成10年1月頃から同年9月頃まで、頻繁に元信者らを連れて原告の元を訪れ、脱会を強要したことが認められるから、被告宮村については、被告隆らの原告に対する前記不法行為のうち、上記期間に係る部分について、これに加担したものと認めるのが相当である」(太字は取材班)。

 原告の後藤徹さんが心身拘束下にあることを知りつつ、脱会強要を行ったことを認め、それが不法行為だと断じたのである。

 また、宮村氏はこの間、合計73回にわたり原告の元を訪れた。そこで原告に対し「頭を使え。自分の頭で良く考えろ」「自分の頭で考えられるようになるまでここから出られないぞ」「もし自分の子供が統一教会を辞めなければ、家に座敷牢を作って死ぬまで閉じ込めておく」などの暴言を吐いたこと―などを裁判所は認めた。

 今回の訴訟が始まった2011年当初、被告の宮村氏は取材班記者に向かって「オレは負けたことはない。今度の後藤との裁判も勝つに決まっている」とうそぶいた。それまで司法の断が下されていないということで、「説得」だと言い張って強要活動を正当化し、それを活動の原動力としてきたフシがある。また拉致監禁を「説得活動」と言いくるめる人たちの間で支援を受け、カリスマ性を高めるのに最大限利用してきた。

 この日、傍聴席に姿を見せた参院議員の有田芳生氏は、宮村氏とは「統一教会問題の『同志』」(有田芳生のホームページ「酔醒漫録」06年9月17日付)と書くほど昵懇(じっこん)の間柄。有田氏は敗訴の判決を聞いたあと、そそくさと法廷をあとにした。そしてツイッター上では「事実認定に問題あり」とつぶやいた。

(「宗教の自由」取材班)