人権の国 米国から日本の世論に影響を


“拉致監禁”の連鎖(245)パート10
被害者の体験と目撃現場(31)
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昨年8月1日にワシントンの米連邦議会で開かれたシンポジウムで、拉致監禁の被害を話す舞さん(左)

 舞さんは、アメリカの拉致監禁被害者の会(SAFE)から招かれ、昨年7月から8月にかけて再び訪米した。現地の被害者たちとともに、米連邦議会議員や人権団体などに拉致監禁根絶のための支援を求めた。

 多くの議員が、会うたびに「日本でのディプログラミング(強制改宗)という人権侵害は問題だ」などと憤慨し、支援する姿勢を見せたのは心強かった。

 8月1日には、ワシントンの米連邦議会で開かれた信教の自由侵害の実態を報告するシンポジウムに参加。シンポジウムには「宗教自由のためのベケット基金」のティナ・ラミレス国際・政府担当部長や「人権のためのリーダーシップ協議会」のキャスリン・キャメロン・ポーター会長らが出席した。

 舞さんは、そこで特別に挨拶の場を与えられ、問題解決のためには国際社会の協力が欠かせないことを訴えた。

 登壇者たちからは「米政府は日本の当局に対し、この問題を提起すべきだ。そして、他の国々も日本に問題を提起するよう働き掛けるべきだ」などと、この問題に米国や国際社会が積極的に関与していくことが必要だとする意見が出された。

 また、拉致監禁の被害者が日本から来ていると知った、米国の政府諮問機関である「米国国際宗教自由委員会」(USCIRF)が、舞さんに面会を求めてきた。

 この委員会は「信教の自由という普遍的な権利を監視する」ための組織で、「宗教の自由」侵害の事実や状況を検討し、米大統領や国務省、米国議会に政策勧告を行う機関である。

 舞さんと会った委員たちは「(拉致監禁に関する)新しい情報があれば、すぐに知らせてほしい。そうすれば、さまざまなところに掛け合うことができる」と協力を約束した。

 その一週間後の8日には、米国のローカルラジオ局で放送されている「人権問題の被害者が立ち上がって告白する」という趣旨の番組にも出演。1時間の放送の、ほとんどの時間を費やして、舞さんともう一人の被害者が体験を語った。

 人権活動に熱心に取り組んだ故トム・ラントス元米下院議員をしのんで作られた「トム・ラントス人権委員会」のメンバーとは、国際ヘルシンキ人権連合元事務総長のアーロン・ローズ氏らが同席して会い、約40分にわたって被害状況を説明。この年11月にも国務省を訪れ、最近起こった被害を報告した。

 このほか、昨年5月に米プロテスタントの最大教派である南部バプテスト連盟の「倫理および宗教の自由委員会」や他宗教の関係者に面会。宗教関係者らは「日本での宗教迫害」の事例として拉致監禁の実態に熱心に聞き入った。

 舞さんは「アメリカで初めて自分の体験を話した時、相手の人は目に涙を浮かべながら話を聞いてくれた。日本では統一教会員の拉致監禁と言っても誰も理解せず、関心も示さない。でも、人権の国アメリカは全く違った」と言い、今では米国から日本の世論を変えることができるのではないかと、一つの希望を感じていると言う。

(「宗教の自由」取材班)